営業部長
 大宅 憲二

 津波が発生した場合、沿岸部の低地に安全と言い切れる場所はなく、迅速な避難が必要であることは、テレビで連日のように報道される東日本大震災の津波報道から既にご承知のことかと思います。
 東日本大震災では、場所によっては波高10m以上、最大遡上高40.5mにものぼる、まさに想定外の大津波が発生し、東北地方の太平洋沿岸部に壊滅的な被害をもたらしました。死者・行方不明者は現在までに確認されているだけで約23,000人にのぼっており、その大部分は津波による犠牲者と言われています。
 今回は、今回の東日本大震災のような「想定外の津波から人命を守るために早急に実施すべき事項」について考えてみたいと思います。

 まずは、地震による大きな揺れを感じたら「高台や高層のビルに迅速に自主避難する」ということを地域住民に徹底させておくことが極めて重要です。これは、三陸地方の言い伝えにある「津波てんでんこ」のように、自分の命は自分で守ることが基本であると同時に、自らの命を守るだけではなく、自分を助けようとする他の人の命を守ることにも繋がります。
 また、高齢者、寝たきりなどの要介護者、車イスなどを利用されている障害者、難病患者、妊婦、乳幼児、日本語に不慣れな外国人といった、災害時に1人で避難することが難しい「災害時要援護者」に対しては、高台に逃げなくてもよい環境作りを推進し、災害時に避難を受け入れてくれる近傍の高層階等の避難ビルを予め指定しておくといった対策も重要となります。病院や福祉施設等を高台に移転させるなどの処置も必要でしょうが、経費上の問題もあり早急な処置は困難であるため、近傍の津波避難ビルの事前指定等、自治体が主体的に調整していくことが必要と思われます。
津波避難ビル
 避難にあたっては、車いす等で円滑に避難できる避難経路の指定や、その経路を使用した避難訓練も大変重要です。
 なお、訓練の実施にあたっては、指定された経路が何らかの理由により使用出来ないことも考慮し、予め複数の避難経路を検討しておくことも必要です。

 津波から逃げ切るためには、迅速な避難を促す情報提供やそのための時間の確保、避難場所に至る避難経路の確保、避難時の支援者の事前指定など、事前に準備しておくことは多くありますが、まずは、いつ起きるかもわからない地震による津波を想定した避難訓練を行い、それを通じて、避難経路上の危険個所の把握、地域の防災上の課題の抽出、避難実施上の問題点・留意点の認識統一など、避難訓練の重要性を理解させるとともに、地域住民の避難意識の高揚ならびに地域コミュニティによる避難支援や助け合い精神の醸成等を図っていくことが非常に重要であると考えます。