危機管理業務部 主任研究員
 椿山 巖

※「住民避難シリーズNo.1」のつづき。
 「No.1」は、2014年3月28日付の記事を参照ください。



 災害時において「住民避難」は、とても重要なテーマの1つです。「いかに住民を避難させるか」は、「いかに被害を軽減するか」に大きく関係しています。

 私の担当回では、「住民避難」を基本にして、防災関係機関等の資料を参考に、気になっていることなどを紹介していきます。
 第2回目も、前回に続いて、中央防災会議の「大規模水害対策に関する専門調査会報告(平成22年4月)」から。

 想定されている浸水想定は、全部で11類型ありますが、利根川左岸159.5km地点の群馬県千代田町舞木地先を堤防決壊箇所とした渡良瀬貯留型氾濫に注目します。
 この渡良瀬貯留型氾濫では、渡良瀬川、利根川に挟まれる地域の標高が周辺より低く、氾濫水が利根川と渡良瀬川の堤防に囲まれた範囲で貯留されます。そのため、最大浸水深が5mを超え、建物の3階まで浸水する可能性があるということです。
02
クリックすると拡大します。

 徒歩で避難できる浸水深は、約50cmと言われています。しかし、お年寄りやお子さんのいる家庭では、さらに早くから避難を開始しなければならないでしょう。
 避難率と死者数に関する興味深いデータがあります。渡良瀬貯留型氾濫(排水施設の稼動なし)の場合、避難率が0%で死者数約18,000人。避難率が80%になると、死者数は1/5の約3,600人にまで減少します。つまり、避難率が向上すれば、被害は軽減できるということですね。