危機管理業務部 主任研究員
 秋山 隆雄

 弊社は、これまでに300件を超える自治体等の防災図上訓練等をご支援して参りましたが、私も入社以降、複数の自治体等の訓練支援に携わることができました。
 東日本大震災という大規模震災が発生し、その後も各地で頻繁に地震が発生しており、日本中が防災・危機管理に関してこれまで以上に高い関心を持っている昨今、(当然のことではありますが、)訓練に参加された方々の真剣に取り組む姿勢を直に目にし、大変心強く感じた次第です。訓練によって得られた教訓等を各自治体の防災・危機管理体制の整備・向上に確実にフィードバックすることにより、更なる災害対処体制の構築と災害対応能力の向上等に繋げていかれることを願わずにはいられません。

 さて、防災図上訓練ではよく地図を用いて訓練が行われますが、今回は、防災図上訓練における地図の有効活用等について考えてみたいと思います。
訓練用地図
< 図上訓練で使用されている地図の一例 >

 防災図上訓練は、一口に言えば、消火活動などの実行動は行わずに、想定される災害が発生したとして、地図等を使って机上で災害応急対策活動等を訓練するものです。具体的には、情報の収集、整理、分析、共有、災害対策の立案、対策実行のための関係部署等との調整などがあります。
 このとき、地図や表などは、少し前まで(今も?)良く聞いたことのある「見える化」に大変有効なツールであり、使っている所は沢山あるのですが、道路の通行止め、家屋倒壊、火災の状況、災害救援部隊の配置等々、必要な情報を紙の地図に直接記入しているのをよく見かけます。
 情報は時間の経過とともに刻々と変化します。そのため、必要な情報を直接地図に記入してしまうと、次第に多くの情報が重なってゴチャゴチャになってきてしまい、結果、何が書いてあるのか判らなくなってきてしまいます。また、情報の共有という観点から言えば、他の部署の方がその地図から情報を得ようとしても判らないといった状況も生起します。しかも、マジック等を使用して記入すると、間違った場合等はやり直しもききません。こうなると、また新しい地図を用意して書き直したりすることになりますが、この間も状況はどんどん変化しており、情報の抜け等の発生もあり得るのです。
 以上のことを踏まえると、残念ながら、防災図上訓練における地図等の使用については、もう少し演練が必要なのではと思います。

 地図は、情報を面的に展開・総合化し、関係者と情報を共有化して、問題の発見と対策の立案等に活用できてはじめて有効なツールとなり得ます
 そこで、地図使用の基本的な一例としては、
ゞ杁淪∩路、避難所、病院、ヘリポートなど、基礎的に必要な情報が記載されている地図を用意する。
∩躪臈に情報を集約・展開する地図に、ビニールシート(オーバーレイとも言う。)を重ねて載せる
 (透明なので、下の地図は読める)。
F始状況や救援部隊の配置など、情報ごとにそれぞれ透明のビニールシートに色分けしたマジックで記
 入・展開する(情報ごとに複数のビニールシートができる)。
※この際、記入する情報は共通の記号を用いることにより、記入の簡素化・単純化を図る。

というような使い方があります。(なお、マジックは専用のクリア剤を使用すると消すことができて何度も書けます。)
 こうすることで、多くの情報を地図上に展開して、「この地域は被害が多いな、この避難所は近くで火災が起きているから危険(移転が必要)だな、ここに行くための輸送路はこの路線が使えるな」など、総合的な状況把握と対策の立案等に効果を発揮します。
 また、作業用として同じ地図を各部署で持ち、必要な情報を記入・展開しておき、作業用地図上で作成した別のビニールシートと張り替える方法もあります。
 いずれの場合でもビニールシートが透明なので、元の紙地図は台の上に固定していつでも見ることができます。これは、自衛隊では当たり前のようにやっている方法なのですが、非常に効果的です。
 これに加えて、避難所一覧表や備蓄品保管場所一覧表等の各種資料を表形式などで、壁やホワイトボードなどに掲示しておけば、地図上の避難所などの細部の情報も確認でき、まさに「見える化」による情報の活用が図れると思います。

 防災図上訓練の際には、迅速で的確な災害応急対策等が求められます。これらが確実に実践できるよう、地図等を有効活用した訓練を是非とも実施して頂きたいと思います。