危機管理業務部 主任研究員
松田 拓也
暑い日が続いていますが、体調などくずされていないでしょうか?
私は東北育ちなもので、東京の蒸し暑さにはいまだに慣れることができません。早く涼しくならないものかと心待ちにしています。
さて、今回は原子力防災で注意すべきポイントの一つについて書きたいと思います。
実は、私は社内で主に原子力防災を担当しています。先月も某自治体の原子力防災訓練の企画運営を支援してまいりました。
3.11以前は、原子力施設から半径10kmの範囲での訓練が行われていましたが、3.11以降は、法令や指針が改定されたことにより、半径10〜30km圏内の地域もしくはそれ以遠の地域での訓練が実施され始めています。このような地域で訓練が実施されるのは3.11以前には無かったことであり、すなわちこのような地域での訓練は往々にして初めての訓練ということになります。
初めて訓練を実施する場合、まず「原子力防災とは何か?」「自然災害と比べて何が違うのか?」ということを訓練参加者に理解していただくことが重要になります。
では、実際に何が違うのでしょうか?
原子力災害対応でポイントとなるのは、「情報提供」です。
原子力災害の特徴としては、まず5感で感じることが出来ないことが挙げられます。地震でしたら、文字通り揺れを体で感じることが出来ますし、火事であれば体(目など)から温度を感じることが出来ます。ところが放射性物質が飛散している場合には、それは目に見えないですし、鼻で匂いを感じることもない。つまり体感的に何が起こっているのかわからない状態になります。
何が起こっているかわからない状況下では、当然、津波や火災時のように自主的に避難することも出来ません。つまり自然災害では自主避難が行われますが、原子力災害において避難をさせるためには、まずは情報提供をしなければならないということです。
原子力防災においては、まず「どのような状況にあるのか」ということを迅速かつ正確に知らせるということが重要になります。
次に情報提供の内容ですが、これもまた分かりにくい。
自然災害であれば、例えば「A地点で火災があるため避難してください。」これで事足ります。しかし原子力災害の場合、「A地点で500マイクロシーベルト/時が計測されたので風上に避難してください。」と言ったところで何のことやら伝わりません。より住民に解り易く情報を提供する工夫が必要になります。この情報提供要領については、今後別途掲載する予定です。
長々と書いてしまいましたが、要するに原子力災害対応は、情報提供が上手く出来るかが重要なポイントであるということです。
自治体では、この「情報提供力」を身につけることにより、原子力災害対応をより円滑に行うことが出来ると考えます。また、情報を受け取る側としては、その情報がどういう意味を持つのかを理解する基礎知識があると良いでしょう。
今後も、原子力防災における情報提供について書いていきたいと思います。