代表取締役社長
 山本 忠雄

※「防災研修について考える(その2)」のつづき。
 「その2」は、2014年11月25日付の記事を参照ください。



 前回は、「自治体の防災体制整備の現状と課題」と「我が国の防災研修体制と課題」について述べました。
 その解決策として、「望ましい防災研修の在り方」と「防災体制の整備における図上訓練の意義」について説明しますが、今回はまず解決策の1つ目として、「望ましい防災研修の在り方」について述べます。

5 望ましい防災研修の在り方
 私たちは、日頃自分が生活する地域や自分の身に降り懸かるかもしれない災害のことをあまり考えずに生活しています。大地震などによって引き起こされる災害は、いわゆる非日常的な出来事ですから、普段目にしたこともない、あるいは経験したこともない災害というものに対応するためには、特別な(それ向けの)知識、技能が求められ、あるいは、それにふさわしい体制と活動を執ることが必要になります。また、今後予想される南海トラフ巨大地震や首都直下地震などは、被害規模と対応の困難さにおいて国難とも言うべき大規模災害になることが予想されており、国、自治体、地域住民、事業所等が総力を結集して立ち向かうことが求められています。
 そのためには、行政職員であれ、地域住民であれ、大地震などが発生した場合にはどのような状況になるかということをイメージし、誰がどのような役割と能力を持ち、個人及び組織として何をやらなければならないか、あるいはどのような活動を執るのかということを理解し、執るべき行動に慣れておく必要があります。
 災害はめったに起こるものではないので、起こった場合にはすなわち本番であり、やり直しや失敗は許されません。本番においては「訓練で経験した以上のことはできない」とよく言われます。したがって、災害から「人命と財産を守る」ためには、教育訓練によって防災意識を高めるとともに、個人や組織の災害対応能力を養成しておかなくてはなりません。また、防災研修により、自らの災害対応能力や体制上の課題を把握してこれの改善を図るということもまた疎かにしてはならない重要事項です。
 このようなことから、自治体における望ましい防災研修は、以下のようなものであるべきだと考えます。

(1)防災研修のコンセプト
 職員が自己の職責に基づき、防災体制の現状と課題を見つめ、その解決策を考え、職場において改善を主導できる職員を養成するとともに、災害対策本部の要員として求められる災害対応能力を向上させることとします。

(2)研修実施の方向
 上記のような防災研修のコンセプトを実現するため、以下のような研修を実施します。

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 職員研修については、講義・講演により防災・危機管理の基礎的事項を理解させるとともに、災害対応イメージトレーニングにより災害対策本部活動の基本的事項を理解させることを目的とします。

㋐講義・講演
 防災・危機管理論、地震・風水害等発生のメカニズム、防災・危機管理に係る計画、災害対策本部運営要領、国や関係機関の災害等対処についての基礎的事項

㋑実 習
 災害対策本部要員として必要な、情報通信機器等の操作要領

㋒災害対応イメージトレーニング
 被害想定や各種マニュアル、各人の職務などについての教育と、災害発生から参集、災害対策本部の設置、被害情報等の集約・分析、情報の分析に基づく災害応急対策等の初動対応行動の検討などのイメージトレーニング

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 図上訓練については、災害対策本部の災害対応能力の向上、関係機関等との連携の強化及び各種計画等の検証を図ることを目的に、模擬又は実災害対策本部組織により、以下の訓練を段階的に実施します。

㋐災害対応図上シミュレーション訓練
 地震発生から災害拡大期におけるシナリオに基づく課題付与型の図上検討

㋑機能(分野)別訓練
 情報、救出・救助、医療救護、救援物資、交通輸送、広報等の主要活動をテーマとする、地震発生から災害拡大期におけるシナリオに基づく図上訓練

㋒災害対策本部運営訓練
 本部長以下の本部要員全員及び防災関係機関等による、地震発生から災害拡大期におけるシナリオ非開示の、ロールプレーイング方式の図上訓練
 ※ロールプレーイング方式図上訓練
  統制部(コントローラー)からの状況付与に対応して、訓練部(プレーヤー)が情報の収集・分析、
 災害応急対策の立案・調整、会議の開催、広報等の災害対策本部各部としての活動を実際的に実施させ
 る、図上訓練の手法
図上訓練
< ロールプレーイング方式の図上訓練実施時の様子 >

(3)研修実施体制
 一般的に言って、自治体の防災研修の環境は、人材とノウハウが不足し、防災研修の準備などに充当する時間と予算がないというのが現状です。ましてやそれが規模の小さい市町村ともなれば尚更のことで、防災担当者としては何とかしたいと考えていても首長の強力な指導でもない限りは、職員研修や災害対策本部運営の図上訓練などを実施することはなかなか難しい状況にあります。
 そこで考えられるのは、以下の2案です。

々颪篥堝刺楔が市町村の防災研修を実施
 国の統一的な研修プログラムに、各自治体の特性を加味し、既存の公的な研修組織を活用するなどにより防災研修を実施

都道府県と市町村による合同図上訓練の実施
 都道府県が主導し、必要な経費は都道府県と市町村が相応の負担をすることとして、都道府県と市町村合同の、本番を想定した連携ある災害対応図上訓練を実施

 市町村には訓練のためのノウハウや予算がないという現状を考えれば、いずれの場合にも国や都道府県が教育訓練のための予算を配分し、防災研修の企画・実施の支援を部外の専門業者等に委託してでも実施させるというような施策が必要であると思っています。

 次回は、「防災体制の整備における図上訓練の意義」について説明します。