代表取締役社長
 山本 忠雄

※「防災研修について考える(その3)」のつづき。
 「その3」は、2014年12月1日付の記事を参照ください。



 今回は、「自治体の防災体制整備の現状と課題」と「我が国の防災研修体制と課題」を踏まえた解決策の2つ目として、「防災体制の整備における図上訓練の意義」についてです。

6 防災体制の整備における図上訓練の意義
 この「防災研修について考える」というシリーズのまとめとして、危機管理体制整備における図上訓練の意義について述べることにします。
 これまで自治体職員に対する防災研修の必要性とその望ましいと考える研修の在り方について説明をしてきましたが、「とてもそんなことはできない」という声が聞こえてきそうです。そこで、図上訓練の意義を述べてダメ押しをしたいと思います。
 ここで図上訓練を取り上げているのは理由があります。それは、自治体の災害対応能力を高め、防災体制整備を円滑に進めるためには、防災研修の仕上げとして実践的かつ実際的な図上訓練を実施することが必要だと考えるからです。
 防災体制の整備を効果的にするためには、Plan → Do → Check → ActのいわゆるPDCAサイクルを継続することが必要です(図3)。これは、防災体制の整備だけではなく、BCP(業務継続計画)の実行性を高めるための必須事項としても言われていることです。
図3防災体制の整備を効果的にするためのPDCAサイクル
 言うまでもなく、自治体の責務は住民の生命と財産を保護することであり、そのためには災害対応体制の整備・向上を図ることが求められています。このため、防災体制の整備や災害対策本部の運営に関する計画やマニュアル等を作り、本部施設やそれに必要な機材等を整備する、これがP:災害対応のための基盤作りです。これを訓練を実施して機能を発揮することができるかどうか試すことが、その際、訓練の状況を評価・検証し、課題を明らかにしてその改善策(何を、どのように 改善するか)を検討することがです。そして、Cに基づいて計画やマニュアル等を見直すことがA:改善計画を着実に実行する、ということです。
 防災体制の整備を効果的に進めるためには、このPDCAサイクルを確実に実行することが必要ですが、多くの自治体においては地域防災計画の作成で終わっているように見えます。したがって、図上訓練の実施に踏み込むかどうかが防災体制の整備を効果的に進めることができるかどうかに掛かっています
 図4は、その答えとして、防災体制の整備における図上訓練の意義をまとめたものです。
図4防災体制の整備における図上訓練の意義
 大規模災害発生時の自治体の使命は、住民の生命と財産の被害を局限することですが、これは大規模被害が発生し社会状況が混乱する中で、広範多岐にわたる応急対応策を執ることが求められ、しかも長期にわたって災害対策本部を運営していかなくてはなりません。
 一方、自治体は、災害発生時においても住民からの行政サービスの要求に最大限に対応することが求められますが、多様な住民等からの要求を、施設の損傷や停電等の劣悪な執務環境、少ない人的・物的資源、さらには状況混乱の中で実行しなくてはなりません。
 自治体は、この使命をどのように達成するかということを課題として、
〕汁曚気譴觧態(被害)を想定し、それにどのように対応するかということを計画・マニュアルとして
 作成する
△修靴董⊆尊歸状況を作為して図上訓練を実施し、災害応急対策の推進と業務継続計画の実施体制作り
 とともにその検証を行い、その成果として教訓と改善すべき事項を明らかにする
という流れで平素の備えを進めることが求められています。くどいようですが、これが自治体の防災体制整備を効果的にするためのPDCAサイクルの具体的な内容です。
 したがって、自治体における図上訓練は、現実に危機を経験することなく、災害対策本部の要員等の災害対応能力を向上させ計画等の実行性の検証・改善と職員の意識を変革し、防災体制の整備を効果的に実施するための最善の方法である、ということができると思います。
 このようなことから、防災研修は、災害対策本部運営の図上訓練を目標に段階的に進めることが必要であるとともに、図上訓練を実施していない自治体は、早急に図上訓練の実施を検討すべきである、と考えています。