危機管理業務部 研究員
 戸浪 豊

※「人命救助の基本について考える(その1)」のつづき。
 「その1」は、2015年1月13日付の記事を参照ください。



 今回は、私の体験談をご紹介しながら、「人命救助の基本」についてまとめてみたいと思います。

 私は元自衛官で、毎年、所属の部隊で救急法を教育していたり、上級救命や自治体の防災リーダーを育成する研修講座等に参加してAEDや救命処置を何度も経験しておりました。
 しかしながら、3年くらい前の事ですが、妻とレストランで食事をしていると、大柄な男性がいきなり私達のテーブルに倒れこんできました。食器とともに男性は地面に倒れました。突然の事だったので「一体何が起こったのか」と驚き男性を見ると、口から泡を吹き、体は痙攣し、顔は苦痛に歪んでいたため、私はその場で固まってしまい動くことができませんでした。すると、元看護師の妻が、スカートの乱れを気にもせず男性に馬乗りになり、ハンカチを倒れた男性の口に入れて体を抑えていました。「あなたは救急車を呼んで!」という妻の言葉に、私は我に返ったようにやっと身体を動かすことができました。
 この時は、「てんかん」による発作で心肺停止にまでは至りませんでしたが、不意に、しかも未体験の状況にいざ遭遇すると、何をどうしていいのか分からなくなるということを身を持って体験したとともに、普段から喧嘩ばかりしている妻ですが、現役を退いたとはいえ、迅速にかつ手際良く応急処置を行った元看護師の勇気と行動力に敬意を感じました。また、さすがに、常に命と接するような現場(環境)に身を置く者とは経験値が違うということも痛切に感じた次第です。
 というわけで、いわゆる一般の方が「習ったことがいざ実際の場面で出来るかどうかは分からない」というのが、体験に基づく私の実感です(勿論、事前に習っておくことは極めて重要なのは言うまでもありません)。

 また、自衛隊での勤務中、所属部隊でランニングをしている時に先輩隊員が倒れ、結果的には死亡してしまうという不幸な事故が2回ありました。
 当時はまだAED等が無かった時代でしたが、いずれにしても、多数の同僚隊員がいたにも拘わらず、みな慌てるばかりで、医務室に運ぶのが精一杯の状態だったことを思い出します。
 「たら、れば」の話になってしまいますが、当時AEDがあったら、あるいは誰かが、いや私がその時に迅速かつ的確に心肺蘇生術を施せていたら、その2人の先輩は今も元気に生きていて、OB会で一緒に酒を飲みながら当時の事を談笑していたかもしれない、そんな思いを今でも抱いています。

 人命救助は、人間の為し得る最も崇高な行為だと私は思います。皆さんにも是非ともそれを認識していただくとともに、もし倒れた人に遭遇した時などには、助けてあげられる知識とスキルを身につけていただくことをお願いし、まとめにしたいと思います。

【まとめ】
‥櫃譴討い訖佑冒遇することは決して珍しいことではありません。
 それは、あなたの家族かもしれません。
⊃看拂篁澆簑舂冥亰譴紡个靴討蓮△箸發く迅速な処置が重要です。
AEDの使用方法や最低限の救急法等について、事前に習っておきましょう。
いい響遇した場合でも固まらない。まず深呼吸して冷静になり、慌てずにひとつひとつ確実に処置して
 ください。人間は慌てると必ずミスをする生き物です。
ゼ分で出来ないと判断される場合は、周囲の人に協力を仰ぐ(あるいは指示する)など、速やかに助け
 を求めましょう。

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< 自治体での地域防災リーダー育成研修におけるAED講習の様子 >