危機管理業務部 研究員
 清水 信雄

※「先輩の教え(その1)「鉛筆の削り方と危機管理」」のつづき。
 「その1」は、2015年2月16日付の記事を参照ください。



 前回は、「先輩の教え(その1)「鉛筆の削り方と危機管理」」というお話をさせていただきました。
 今回は、「先輩の教え◆大切な地図と危機管理というお話です。ちょっとの時間、お付き合いください。

某日の家族の会話

「ねぇ〜、どうやって行く?」
次女
「ねぇ〜、何時頃、出発する? 帰りは?」


 何やら楽しげな会話をする妻と娘たち。
 どうやら、平日に東京ディズニーランド(ひょっとしたら、ディズニーシーかも?)へ遊びに行く計画を立てているようです。朝早く行かないと混むとか、バスが良いとか、地下鉄が良いとか…。「どうして、あんなに混む所に好んで行きたがるのか?…そもそも、僕は誘わないのか…。」私の疑問と、ちょっとは誘って欲しいような気持ちをよそに、ガイドブックを広げ、地図を見ながら話は益々盛り上がっています。
 しばらくすると、結論らしきものが出て、仕切り屋の長女がまとめています。

長女
「家を出るのは〇時! △△線に乗り、◇時に到着!
 ディズニーランドでは、これと、これと、これに乗って…!」


 案内図を丁寧に指しながら説明する長女、その説明に満足げに頷き、心は既にミッキーと一緒にいる次女、行動予定を懸命にメモする妻…。
 3人の様子を横目に、私は若い頃に先輩から教わった地図に関する事を思い出しました。

先輩
「現在地はどこだ?」


「わかりません…。」

先輩
「なに〜!!! 現在地も知らないで、これからどう行動するんだ!」


「…現在地は、…だいたい…この辺かと…。」

先輩
「だいたい? この辺? そんなことで部隊を指揮できるのか!」


 自衛隊の若手隊員であった私は、地図とコンパスを持ち、一定の時間内に示されたルートを歩いて目標地点に到達しなければならない訓練の真っ最中。
 「どのぐらい歩いただろう。」、「ここは、一体どこだろう?」、「水が飲みたい、何か食べたい!」などと考えつつ、ずーっと先輩から指導を受けっぱなしです。
 しばらくすると、先輩は何も出来ない私に、1つのコツを教えてくれました。

先輩
「お前の行動を最初から見ているが、本当に地図を使っているのか?」


「使っています、ずっと…。」

先輩
「お前は、ただ地図を広げて、何となく眺めているだけだろう?だから、現在地がわからないんだ!
 いいか〜、地図は、眺めたり、見たりするだけじゃなく、読むんだ! そして想像する!
 これが、とっても大切なんだ!」


「地図を読む…? 想像する?…」

先輩
「そうだ! 地図には、様々なことが描かれている。その内容を読み込んで使うんだ。
 例えば、今、お前が現在地が分からず途方に暮れているのは、出発する前に経路だけをただ漫然と見た
 だけで、等高線を全く読んでいなかった!
 読み込んでいれば、これから歩く経路は目標地点まで、何回登って何回下るか、よく分かったはずだ。
 さらには、周りの森林の様子が、針葉樹林から広葉樹林に変わった事さえ、気付いていない。
 地図には、多くの情報が書き込まれている。だから、地図は読み込んで使い込む。解ったか!」


「はぁ…。」


 各種災害の発生に備え、日頃から様々な準備に取り組まれている自治体の防災・危機管理担当者などの皆様は、その能力をさらに向上させるため、訓練等にも励まれているものと拝察いたします。その中でも極めて重要な位置付けにあるのが「図上訓練・図上演習」であることは皆様ご承知の通りかと思います。
 しかしながら、図上訓練(演習)を行う際、地図が極めて重要なアイテムになることがあまり認識されていないという課題があり、実際に訓練をやってみても、殆ど地図が活用されていない、さらには、そもそも地図がない(準備もされていない)状態で訓練に臨んでいる、といったことが散見されるのが現状です。

 最近では、電子地図が軽易に使用できるようになり、大変便利になりました。また、その地図を航空写真に変換したり、ストリートビューを使って現地の様子が手に取るように把握できたりします。
 お休みの日のドライブでも、カーナビのお世話になることも多いでしょう。目的地を入力し、あとは画面と音声案内に従って安全運転に心掛けてさえいれば、比較的容易に目的地に到達することが可能なので、大変な優れものだと言えます。
 とにもかくにも、一昔前のように、地図帳を広げて、地図とにらめっこしながら、頭を悩ますようなことはめっきり少なくなりました。

 ただ、この便利なアイテムを使うにあたっては、是非一度基本に帰って、アナログの地図と「にらめっこ」して、地図の素晴らしさとその有効性を理解していただきたいのです。そして、電子地図と同様、アナログの地図も、もっともっと活用していただきたいのです。
 地図には、それは詳しく現地の様子が描かれています。最初は、地図を広げて「眺める」だけかもしれませんが、少しづつ努力して慣れてくるにつれ、「見る」ようになれますし、さらに努力し着意するようになれば「読む、読み込める」ようになってきます。
 さらに、春夏秋冬、昼と夜、晴れと雨など、地図の要素に時間的な変化を入れて現地を想像してみると、大変興味深いですし、飛躍的に地図を使う能力が向上するに違いありません。これは決して難しい話ではありません。
 行楽地では、案内図入りのガイドブックが大変人気がありますよね。文書だけではなかなか理解できないことでも、地図を有効に活用すれば、少ない時間で貴重な情報が共有できます。

 是非、アナログの地図を有効に活用できるよう、地図を読む、地図を読み込む習慣を付けていただければと思います。

【 今回の「先輩の教え」 】
 地図は眺めるものではない。見るもの、そして読むもの!
 地図は読み込んで使ってこそ、価値がある!

02
 次回も、地図に関するお話の続きをしてみたいと考えています。