危機管理業務部 主任研究員
 和知 喜久雄

 東北で地震が起こると、「宮城県石巻市はどうなっているのだろうか」という気持ちがいつも込み上がってきます。
 それは、4年前(平成23年)に東北地方太平洋沖地震、いわゆる東日本大震災が起きたときは、まだ現役の自衛官として静岡県御殿場市駒門で勤務しており、発災後、駒門から石巻市に災害派遣に出動し、現場の状況を確認するとともに、現地で活動する隊員から多くの情報を収集してきた経緯があるからです。いま思い出しても、地震、津波の恐ろしさを痛感します。
 去る5月に、休暇を利用して4年ぶりに石巻市の同じ場所と東北の一部を見てきましたが、当時被災した多くの家屋が更地になっているだけで、復興というものがどれだけ時間がかかるかということを身を持って知ることになりました。また、前もって勉強もせず被災地となった大船渡の海岸にあるホテルに宿泊してしまったために、思わぬ恐怖と強烈な印象を感じた次第です。
 今回から数回にわたり、「東日本大震災から学ぶ!」と題して、発災時に何を学んだか、発災地で見てきたこと、感じてきたことなどをご紹介したいと思います。

 今となっては「もう4年も前のこと」と思う方もいるかもしれませんが、地震や津波は勿論、こと災害に関しては、過去の教訓に基づく「備え」がとても大切です。
 今回、宮城県仙台市にある瑞巌寺を訪れた際、案内のおばあさんに、語り部のような話を聞きました。瑞巌寺の歴史や仏像の話と、まさに大地震が起きた時のことです。
 瑞巌寺は有名なお寺で、場所をご存知の方も多いかと思います。大変綺麗に整備されているのですが、入口の門から入ると約100m位にわたって左側だけ松林がありません。これは、地震によって発生した津波が松島湾から神社の中まで押し寄せてきて、それが松の根を腐らせてしまい、今は広場になっているそうです。その時の様子をおばあさんは熱心に話してくれました。
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< 津波によって松林の根が枯れ果てた瑞巌寺の境内 >

 私は、おばあさんをはじめこの付近にいた皆さんはどうしたのか聞くと、ただ一言、日頃の避難訓練の通りに高台に避難したと言われました。大きな揺れを感じて、これは津波が来ると直感し、近所の皆さんと協力して避難したとのことです。
 この話を聞いて思ったのが、当たり前なのですが、日頃の「備え」が重要だということです。また、そういう意識がないと「備え」は役に立たないことも実感しました。

 4年前、発災と同時に約20万人態勢で陸海空の自衛隊が災害派遣にあたっている頃、私は静岡県御殿場市の駒門にいて、中継基地である駐屯地業務隊長として、被災地である東北に派遣される部隊を送り出していましたが、心中、「いま私にもできることは他にないか」と考え思いついたのが、いつも気になっていた「東海沖地震に対する備え」でした。
 東北地方と同じくらい大きな地震が今にもこの東海沖でも発生すると騒がれていた時ですから当然のことです。その時は東北の被災者の救出が最優先でしたから、不謹慎という気持ちもありましたが、いま東北で起きていることを見てきて、それをこの駒門に残しておかないといけない。私だけでなく、ここに長く住み、直接影響を受ける人達を守ることになるであろう者達を育てておかなければならない、そういう気持ちがだんだんと大きくなりました。そこで、石巻市に行く準備をしたわけです。
 まず、現地に行く編成ですが、その時の着眼は以下の3点でした。
,泙世泙醒録未留洞舛發△蟯躙韻幣貊蠅覆里如∋峇蠎圓琶埓すること。
転勤族ではなく、この地に長く勤務ができる者に限定すること。
女性も編成に入れること。

また、「何を見て来るか」についても明らかにしました。
仝獣呂燃萋阿垢觴衛官が困っていることは何か。
被災地の駐屯地の機能として保持しておかなければならないことは何か。
H鏈卉呂涼麁崔呂任郎どんなことで苦労しているのか。

そういったことを現地で見てくれば、きっと「東海沖地震に対する備え」として役に立つはずだと思いました。
 そして、ついにその時がやってきました。駒門から出動し、現地の石巻に派遣された部隊から、生鮮食料品等の補給の要求があったのです。私は、この機会を最大限に活用したいと思い、早速実行しました。
 私の考えを説明した上で、現地に行く者を志願させたところ、多くの者が名乗り出てきました。あらかじめ出動編成の条件を決めていましたので、すぐに要員は決定しました。その多くは専門性をもった事務官でしたから、それなりの情報収集をしてくれる者ばかりでした。中には管理栄養士や外来係の女性隊員も志願してくれましたので、こちらの期待通りでした。
 そこで、志願してくれた者を全員連れて行くことにしましたが、駒門駐屯地の機能を維持しつつの派遣となるので、3回に分けました。

 この情報収集は、私が想像していた以上の成果があったわけですが、その成果については、次回ご紹介したいと思います。