危機管理業務部 研究員
 齋藤 芳

 今回は、私が弊社に入社したての(研修生だった)頃、某自治体での避難所運営訓練に研修を兼ねて参加した時に感じた事などをご紹介したいと思います。

 その訓練は、学校の体育館を避難所として使用して実施されました。また、その学校の校庭には防災倉庫があり、そこには非常用のアルファー米、飲料水、野外に設置できる仮設トイレ、照明用のバルーン、さらには発電機、発電機用の燃料、毛布等が備蓄・保管されていました。
 その自治体では、これまでに数回避難所運営訓練が行われていたようで、今回の訓練も自治体の方が中心になるとともに、地域の方々も終始熱心取り組んでおられ、順調に進みました。
 訓練は、|録免生後の避難所の開錠(もちろん鍵がどこにあるか、誰が開錠するのかなどは大変重要です)、∩匕砲ら必要な資材を運搬→設置(ごく普通の体育館を避難所の形に整える)、受付、と鏈匱圈蔽楼茲諒々、どちらかといえば高齢の方、お子さん、お子さんの手を引いたお父さん・お母さん等)の受け入れ、という流れで進みました。

 訓練の中で一番慌ただしい場面が終わり一息ついた頃、体育館で毛布の上に座っていた参加者の方が「寒いから日の当たる場所に移動しよう。」と言い、少しずつ移動を始められました。訓練は12月に行われたこともあり、また、体育館には暖房もないため確かに床はかなり冷たく、床に引いた毛布はあるものの冷気は直に伝わってくるような状態でした。
 それとほぼ同時に、弊社の先輩社員(陸上自衛隊を定年退官後、自治体での防災関連勤務がある方)が自治体の方と何事か話しているのが聞こえてきました。
先輩社員
「○○さん、この体育館の区画割はもう少し考える必要があります。
 被災された方は、場合によっては長期間ここで生活します。
 トイレ近くの場所を割り振られた方は、毎日、毎晩、四六時中、自分の生活スペースの近くを
 (トイレに行く)人が通ります。これは正直たまったものではありません。
 かといって、一度区画割をしたスペースを簡単に変更できるかというと、
 なかなか同意が得られないのが現実です。
 トイレや出入り口近くの動線は共用の荷物置き場に活用するなど、工夫が必要かと思います。」


 この訓練(研修)で得た教訓は、「被災者の立場(視点)に立って考え、対応していくことの重要性」です。具体的には、「床の冷たさ」と「避難所内部の区画割」についてです。

 まず、「床の冷たさ」についてですが、私は、これまで自衛官として陸上自衛隊で勤務しており、これまで発生した様々な災害の中で避難所に関しては限りなく目にしていました。しかしながら今回、冬場の避難所内の「床が冷たい」という、よくよく考えてみればごく当たり前、だけどなかなか気が付かない(当の本人でなければ気にしない)事実に初めて気付かされました。そして、今まで気が付けなかったことを反省しました。
 どんな災害であれ、被災されて避難所で生活された方は本当に大変だったのだろうと思います。誰かが気付かないと改善されない、けれども、誰かが気付けば比較的容易に改善できる(される)ことは確かに存在するものです。この「気付き」が多くあれば、少しでも被災された方の役に立てるのだと痛感した次第です。

 次に、「避難所内部の区画割」についてですが、これに関しては、今の状態が今後どのように変化し、どのような事が発生するかを予測する力、いわゆる「想像力」の重要性を感じました。
 何度も避難所運営(の訓練等)を支援している先輩の的確な助言に触れ、非常に勉強になりました。これに関しても、あまり深く考えずに、淡々と訓練をしている(訓練のプログラムを消化している)だけでは気付けないことだと思います。訓練は非常に大切で、かつ貴重な経験の場であることは言うまでもありません。しかしながら、「ただやれば良い」訳では決してなく、如何に本番(実災害)をイメージできるか(しているか)、訓練前の準備等も含めどれだけ真剣に臨んでいるか(どれだけ当事者意識や責任感等を持ち得ているか)など、訓練に臨む姿勢や気持ち等によって、その成果は大きく左右されるのだと思います。
避難所
< 震災時における実際の避難所内の様子 >

 ひと口で防災訓練と言っても、国(政府や防災関係機関)・地方(都道府県や市区町村)など様々なレベルで行うものから、今回ご紹介したような地域における避難所開設訓練まで多岐に渡りますが、いずれにしても、被災された方々(現地や現場)の立場(視点)に立つことを決して忘れてはならないのだと思います。
 我が身を振り返れば、次に何が起きるのかなどを予測する「想像力」はまだまだ乏しい状態ですが、今後も、被災された方々(現地や現場)の立場(視点)に立つことを決して忘れることなく、何が起きるのか想像する力を鍛えながら、様々な防災訓練等のご支援ができるよう日々精進して参りたいと思っております。