危機管理業務部 主任研究員
 山之内 裕

※「国民保護事態における病院の避難(その5)」のつづき。
 「その5」は、2016年11月21日付の記事を参照ください。



 前回は、避難誘導の中で、避難指示等と入院患者の避難時のグルーピングについて考えてみました。今回は、避難(転院)の際の搬送について考えていきたいと思います。

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3 搬 送
(1)集合場所(避難待機場所)の決定
  ア 避難指示等が発令された場合、総括班は建物の被害(損壊状況)、医療設備等を勘案し、病院内
   に一時的な集合場所(避難待機場所)を決定します。
  イ 避難する患者が多数の場合は、上記集合場所は複数個所設定し、病棟(フロアー)ごとに割り当
   てます。
  ウ 総括班は、決定した集合場所(避難待機場所)を各班長に連絡します。

(2)集合場所(避難待機場所)への搬送(移動)
   避難統制・管理班は、総括班から集合場所(避難待機場所)の連絡を受けた後、避難統制・管理班
  長の指示により、グルーピングした患者を集合場所(避難待機場所)に搬送(独歩可能患者は自力移
  動)し、搬送後は医療を含めて、患者の管理等を実施します。
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< 集合場所(避難待機場所)のイメージ >

  ア 誘導実施時の留意事項
  (ア)対策本部がエレベーターの運転の安全確認実施後、担送患者及び護送患者を優先して、エレベ
    ーターを使用して搬送を実施します。ただし、エレベーターの安全が確認できない場合は、スト
    レッチャーや担架により搬送します。
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< ストレッチャーによる搬送イメージ >

  (イ)患者の誘導に際しては、ハンドマイク、誘導灯などを使用して避難経路、方向を確実に指示し
    ます。
  (ウ)搬送(移動)は、独歩患者、護送患者、担送患者の順に行い、グループ毎に病院職員を誘導員
    として指定し、同行・誘導させます。
  (エ)患者が冷静に落ち着いて行動できるよう、急がせずに明瞭な声と言葉で誘導するとともに、患
    者が単独行動にならないように目配りをします。
  (オ)移動の途中で患者が忘れ物に気付いても、単独での後戻りは許可せずに、後刻、病院職員が取
    りに行くことを説明します。
  (カ)浴室、トイレ等に患者がいないことを確認します。
  (キ)病院の当直者(日直者)は、不測の事態に備えて、様式1「入院患者一覧」を携行(当直室が
    あれば常備)します。
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< 様式1「入院患者一覧」 >

  (ク)国民保護事態における要避難地域に指定されている場合の搬送(移動)において、屋外を通行
    しなければならない時は、警察、自衛隊等による警戒・警備を依頼します。
  (ケ)誘導員と誘導統制・管理班長との連絡手段を確保し(携帯電話等)、適宜、情報(移動状況
    等)の共有を図ります。

  イ 担送患者、特殊治療患者対処
  (ア)チューブやカテーテルなどは固定又は除去します。
  (イ)中心静脈栄養カテーテル(高カロリー輸液療法)や末梢静脈ラインは身体に近い部分でヘパリ
    ンロック処置を行います。
  (ウ)人工呼吸器は除去し、アンブーバッグ等に切り替えます(この際、吸入酸素濃度や終末呼吸陽
    圧などを、できるだけ人工呼吸器接続中に近い状態を維持します)。
  (エ)手術中の患者に対しては、速やかに創部を閉鎖し、創部保護の処置後、搬送します。
  (オ)密封小線源治療中の患者や易感染患者は、できるだけ他の患者との接触を避け、隔離状態を作
    為します(勿論、最終移送先(転院先)では隔離します)。
  (カ)保育器収容新生児は、バッテリーによる保育器の保温ができない場合、毛布、リネン等で包み
    保温に努めます。

(3)転院(移送)先病院への搬送
  ア 転院(移送)先病院、搬送手段の決定、安全の確保
  (ア)病院長(対策本部長)又はその業務代行者が避難の指示を発令した場合、情報調整班は、病院
    の所在する自治体の保健・医療・病院関係部署へ協力を要請し、様式1「入院患者一覧」を提出
    し、患者の転院(移送)先病院を確保・決定します。
  (イ)転院調整班は転院(移送)先病院と特殊な医療処置患者の情報提供を含めて、調整を行うとと
    もに、容態に応じた搬送手段を決定します。
  (ウ)国民保護事態の要避難地域に指定された場合、総括班は搬送間の安全の確保を警察、自衛隊等
    に要請します。

  イ 搬送方法
  (ア)転院調整班は、患者の容態に応じ決定された搬送手段に基づき、転院(移送)先病院との距離
    を勘案し、ピストン輸送も考慮した上で、必要な車両等の車種及び台数を算定します(原則、担
    送患者は救急車、護送患者は救急車、福祉車両等、独歩患者はワゴン車、マイクロバス、大型バ
    ス等)。
  (イ)転院調整班は、転院(移送)先病院及び搬送手段を次葉の様式2「転院先病院、搬送手段等一
    覧」に記入し、避難統制・管理班長に提供します。
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< 様式2「転院先病院、搬送手段等一覧」 >

  (ウ)総括班は、患者の車両等への乗車位置を決定し情報調整班に連絡します。
  (エ)情報調整班は、患者搬送に必要な車両等の車種及び台数を所在する自治体の保健・医療・病院
    関係部署へ連絡し、調達の要請を行うとともに、車両等の集結場所を連絡します。
  (オ)避難統制・管理班長は、集結した車両等に患者を様式2「転院先病院、搬送手段等一覧」に基
    づき、収容し搬送を開始します。
  (カ)転院調整班は、移送間に医療活動の必要な患者の搬送車両に医師等を同乗させ、患者の容態管
    理を行わせるとともに、転院先での確実な引継ぎを実施させます。


【閑話休題】
 お約束通りの「東京スカイツリー」です。今回も、明け方の画像です。コントラストが綺麗でした。
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