危機管理業務部 主任研究員
 大木 健司

※「災害から逃れるために(その1)」のつづき。
 「その1」は、2017年2月6日付の記事を参照ください。



 前回に引き続き、災害から逃れる方法について考えてみます。

 前回述べた水害や土砂災害のように、梅雨や台風などの大雨が原因となって発生する災害は、気象情報や警報の発表などからその発生が予想できるので、各種情報に注意していれば、避難すること自体はそれほど難しいことではありません。
 ただ、重要なのは「避難する決心」ができるかどうかです。
 避難勧告などの避難に係る情報が出されたタイミングが、真夜中であったり暴風雨時であったりすると、避難すること自体を躊躇してしまうのは、ごく自然で当たり前のことと言えるからです。

 さて、避難する決心ができたとして、一体「どこ」に逃げればよいのでしょうか
 平成27年9月の鬼怒川の決壊においては、自治体の避難指示の遅れ決壊した川の方向への避難誘導などが問題になりました。
 平成28年4月の熊本地震では、自治体が指定していた「避難所(指定避難所)」が被災して使えなかったケースもありました。また、本来「避難所」として指定されていない公共施設等に避難したため、被災者が避難している場所を自治体が把握できず、ただでさえ滞っていた救援物資の入手が困難になったケースもありました。
 「指定避難所」には、食糧や飲料水などの物資が備蓄されていることが多いのですが、品目的にも量的にも必ずしも十分とは言えません(大きな災害に遭ったことのない自治体では、そもそも指定避難所に備蓄品が無い所もあります)。
 避難所以外の場所に避難した場合は、当然、備蓄品等があるはずもないので、避難者は自給自足するしかありません。

 そこで、避難するうえで重要となるのが、当面の避難生活に必要な食糧、飲料水、日用品などの備蓄と非常時の持ち出しです。一般的に、非常持ち出し品としては下図のような物が考えられ、皆さんも一度は目にしたことがあろうかと思います(※日本赤十字社 東京都支部のHP「家庭で減災対策」より転載)。
非常持ち出し品(一次持ち出し品)
< 非常持ち出し品(一次持ち出し品) >

非常備蓄品(二次持ち出し品)
< 非常備蓄品(二次持ち出し品)及び防災準備品 >

 自治体では、公助が得られるまでの3日分の備蓄を呼び掛けていますが、実際に3日分の備蓄とはどれ位の量になるのでしょうか?
 水は一人1日3ℓが必要と言われています。つまり、水だけで9ℓ、食糧はアルファ米・乾パン+副食(缶詰など)を一食200gと軽めに算定しても、9食分=約2kgとなり、備蓄した飲料水と食料だけで11kgにもなります。この他に着替えや日用品などを携行することを考えると、一人で15kg位の物が必要になります(※15kgの重さがどれ位か想像できますか?)
 果たしてこれだけの品物を持って、目の前の危険(瓦礫、倒壊物、放置車両や火災など)を回避しつつ、家族全員が避難所まで辿り着くことができるでしょうか?一般的に、一人の人間が背負って歩くのに支障のない重量の目安は、成人男性で15kg、成人女性で10kg程度だと言われていますが、この目安に習い、(男女が共に避難所まで避難するケースにおいて)仮に女性の負担を10kgに軽減するためには、男性が20kgを背負うことになります。また、高齢者や乳幼児などを同伴して避難する場合においては、健常者の負担がさらに増加します。車が使えれば大丈夫と思いがちですが、大規模震災時などは、道路自体の被災や停電による渋滞の発生等により、車は使えないと思わなければいけません。

 では、如何にすればよいのか?例えば、このような工夫が考えられると思います。
/料や飲料水を携行しやすい量(1日分ごと)に小分けにして備蓄しておく
 自宅の被害の程度により、避難時に携行する飲食物の量を選択できるように1日分ごとに小分けにして
 おく。

△箸蠅△┐此■影生き延びるために必要な品物を持てる分だけ持って避難する
 まずは自活に必要な物(飲料水、食糧、貴重品等)だけを持って避難し、避難後の状況により、避難所
 では入手できないものを取りに帰る、というのも一つの選択肢でしょう。


 特に「津波警報」が発表されている地域では、津波の到達時間を念頭に置き、まずは何よりも、生き延びるために速やかに避難することが重要でしょう。

 平成28年8月にも、台風第10号による大きな被害が発生しました。気象庁が1951年に統計を開始して以来、初めて台風が上陸した東北地方の太平洋側や北海道では、またも「想定外」の大きな被害に見舞われました。
 地震に限らず、風水害においても、いつ、どこで、どのような災害が起こるか予測できない状況です。「備えあれば憂いなし」とよく言われますが、最低でも「憂いあっても備えあり」となるよう、日頃から準備をし、いざという時には災害から逃れられるようにしておく姿勢が必要と言えるのではないでしょうか。