危機管理業務部 主任研究員
 陣内 紀匡

 車を運転する人はもちろんの事、殆どの人がこの「緊急輸送道路」と言われているものがどういうものか、あるいは、この言葉を一度は耳にしたことがあるかと思います。
今回は、この「緊急輸送道路」について考えてみたいと思います。

 まず、「緊急輸送道路」(以下「緊急用ルート」という)ですが、日常、幹線道路として多くの人や車両が利用し、震災時には、避難、救急・救援、消火、緊急物資の輸送、復旧・復興に利用される動脈として重要な役割を担います。また、緊急用ルートのうち、主要な防災拠点、空港や港湾、他県等と連絡する道路など、特に重要なものを特定緊急輸送道路として指定することにより、震災後の広域的な救援活動や復旧・復興の大動脈として重要な機能を果たすことになります。
 この「緊急用ルート」を指定・確保しても、高速道路や沿道のビルが横倒しになって道路を閉塞し、その影響などで消防車や緊急用車両の現場到着が遅れ、被害が更に拡大することになります。
この状況として、平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で、高速道路や沿道のビルが横倒しになっている映像を記憶している方は多いと思いますが、こうした経験や反省を踏まえ「耐震改修促進法」が制定されました。
 昨年、読売新聞に「震災緊急道路指定進まず」「沿道耐震診断の義務化は7都府県」という大きな見出しで掲載されていました。同法は、都道府県や市町村に対し、高速道路や国道などを震災時の「緊急用ルート」として指定するよう規定されたものです。沿道にある建物において、耐震基準が厳しくなった1981年(昭和56年)以前に建設された高さ6m以上の建物の所有者には耐震診断を義務付け、都道府県などが診断結果の報告期限を定めるとされたものです。
 国土交通省によると、平成27年4月までに、同法に基づき、緊急用ルートとなる道路や耐震診断の報告期限を指定された都道府県は、東京、神奈川、愛知、滋賀、大阪、徳島、香川の計7都府県であり、この他、山梨県内の25市町村と長野市などが行っているということですが、残る38道府県は、財政負担の増加などを理由に行えていないようです。
 震災時に沿道の建物等が倒壊し、指定されている緊急用ルートが確保できなければ、発災直後の救出救助・医療救護活動など負傷者の救助を行う上でポイントとなる発災後72時間までの救助活動や緊急指定車両などの通行等に大きな影響が出るものと予想されます。
 同省では「震災への備えを充実させるため、自治体の協力は欠かせない」としており、指定を求める方針ですが、各自治体の財政負担となるため7都道府県のみにしか義務付けができていない状況のようです。
 東京都の緊急用ルートは、第一次緊急輸送道路(高速道路含む)〜第三次緊急輸送道路が指定され、総延長約1,970劼砲よび、その沿道で、地震により倒壊し、道路閉鎖を引き起こす恐れのある建物は、約1万棟(耐震診断が必要はものは6千棟)が存在すると推計されるようです。
 これに伴う東京都の緊急用ルートにおける沿道建物の耐震化進捗状況は、特定緊急輸送道路(注)で耐震化率、82.7%(平成28年12月末)であり、平成37年度末100%を目標として進められているようです。
陣内_No.03-01_特定緊急輸送道路(新宿通り)
【 特定緊急輸送道路(新宿通り) 】

 注)緊急輸送道路のうち、応急対策の中枢を担う都庁本庁舎や立川地域防災センター、 重要港湾、空港などを連絡する道路や、その道路と区市町村庁舎などとを連絡する道路として、特に沿道の建築物の耐震化を図る必要があると認められる道路を「特定緊急輸送道路」、それ以外の道路を「一般緊急輸送道路」とする。

 また、主な施策として、特に倒壊の危険性が高い建物における耐震改修の助成を拡充し建物所有者の費用負担の軽減や新たな普及啓発事業の一環として、耐震改修を実施している緊急輸送道路沿道の工事現場に「耐震改修工事中」である旨の耐震マークのシートを掲示したり、仮囲い等に同様のシールを貼り付けたりというような取組を通じて、耐震化の進捗状況を目に見える形で示し、都民の耐震化への機運を一層高めるような努力がなされています。もし、皆さんも道路沿いなどで工事が行われている建物等に「耐震改修工事中」のシール等が貼られているかを確認することができれば、この道路は緊急用ルートで、地震に備えた工事が行われているのだなあということを理解していただければと思います。
 ちなみに、私が居住している近くの幹線道路(笹目通り)の耐震化率は80%以上であり、弊社近くの新宿通り(国道20号)は、70%以上〜80%未満の耐震化率でした。

 もうひとつ知っておくといいことは、ナマズマークの道路標識と防災対応型信号機です。
まず、ナマズマークこと「緊急交通路」(の標識)は、大震災時「緊急交通路」に指定されている道路であり、物資の輸送などの運搬がスムーズに行われるように、一般の車両の進入を規制するものです。
陣内_No.03-02_ナマズマークの緊急道路標識
【 ナマズマークの緊急交通道路標識 】


 また、防災対応型信号機は、震度5強の地震が発生した場合、都心部における交通混乱を回避するため、交通規制を行うものです。災害発生時に、都心部への交通流入を抑制または抑止するため、矢印信号による特殊な信号表示に切り替わるようです。たとえ停電していても、この信号機には自家発電のような装置がついているそうです。
防災対応型信号機
【 防災対応型信号機 】

 具体的には、都内において、一般車両は環状八号線の内側への流入が抑制され、環状七号線の内側には入れなくなる場合があるようです。
 車を運転する方は普段から「緊急交通路」や「防災対応型信号機」などをチェックしておき、緊急時など慌てることなく冷静な対応ができるよう心掛けておくことも必要ではないでしょうか。

 都内においては、首都直下地震が今後30 年以内に約70%の確率で発生すると推定されており、大地震がいつ発生してもおかしくない状況であるということは皆さんご承知のとおりだと思います。
2年後には、東京2020オリンピック・パラリンピックが開催され、国内外から多くの人々が東京を訪れることになることから、安全で安心できる都市の実現が急務であり、東京の防災対応力の強化を図るためにも、更なる耐震化が必要ではないかと思います。こういった観点からも、日常の生活の中で危機管理について考えておくことも必要であると思います。