危機管理業務部 主任研究員
 和知 喜久雄

 国民保護法が平成16年6月に制定されてから今年で14年目となり、国民保護訓練が全国的に普及されてきています。それは、平成29年度末において、全国の都道府県で1回は国民保護訓練が実施された実績にも表れています。多いところは、既に11回の訓練実績を持つ県もあります。昨年からは、国と地方公共団体との共同訓練は年間25回を超す勢いで積極的に実施されています。
 また、昨年度は、全国各地において「弾道ミサイルを想定した住民避難訓練」が23回ほど行われています。北朝鮮の弾道ミサイルの脅威が高まっていた中、このような事態を想定した訓練は、住民にとっても必要に迫る訓練であったものと思います。

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会まであと800日を切った現在、政府をはじめ競技会場を持つ自治体等では、テロ対策等をこれまで以上に真剣に取り組んでいます。
 弾道ミサイルやテロ等から国民を守るための訓練が国民保護訓練ですが、国民保護法第168条第2項において、「指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長が地方公共団体の長等と共同して行う訓練に係る費用で第百六十四条の規定により地方公共団体が支弁したものについては、政令で定めるものを除き、国が負担する。」となっています。つまり、国と地方自治体が共同訓練をする場合は、訓練に必要な経費は国が負担します。
 地方自治体の方はご承知のことかとは思いますが、弾道ミサイルやテロから国民の生命、身体及び財産を保護するための訓練が喫緊の課題となっている昨今、地方自治体の財源を使うことなく訓練が実施できるとあれば、これをうまく活用すべきだと思います。

 今回は、「国民保護共同訓練への挑戦」と題して、地方自治体が国民保護共同訓練を行う際のポイントをご紹介したいと思います。

 ポイント
 共同訓練を行う場合の国の担当者は、内閣官房副長官補(事態対処・危機管理担当)付に所属する人で、事態対処法、国民保護法をはじめとして、事案発生後の関係省庁の対応等国の対応措置等に精通したスペシャリストです。ですから、訓練に関して安心して相談することができます。

 ポイント
 最近の国民保護共同訓練は、大規模集客施設等を使用したCテロ(chemical:化学剤を用いたテロ)・Bテロ(biological:生物剤を用いたテロ)・Eテロ(explosive:爆発物を用いたテロ)が主流となっています。しかも、複数の事案により多くの死傷者が発生する大規模なテロとなっていますが、訓練の場の設定については、地方自治体の意見も取り入れられることから、地域の特性に合致した訓練を行うことができます。
京セラドーム大阪_02
【 国民保護訓練で使用される大規模集客施設等(イメージ) 】

 ポイント
 共同訓練は、国と県、そして発災現場となる市区町村の担当者をはじめ関係機関の担当者が一緒になって訓練シナリオから状況付与する内容までを作り上げることにより、それぞれの自治体、関係機関等の役割、能力を把握するだけでなく、お互いに顔の見える人間関係を築き上げることができ、いざというときに迅速に対応できるようになります。

 ポイント
 自然災害時とは異なるテロ等に対する緊急対処事態対策本部等を実設した都道府県庁、市役所間の情報伝達要領、関係機関との調整要領等について訓練することにより、職員の対処能力の向上及び職員間の意思疎通等を図ることができます。

 ポイント
 訓練を実施する県の担当者は、総合調整業務が多くなるため、複数の担当者で編成することが必要となります。内閣官房の担当者と直接調整するのは県の担当者となり、県の担当者は訓練に参加する市、関係機関等の担当者との調整会議や訓練内容の調整、訓練場所等の確保、訓練に必要な資機材等の調達など、様々な業務を実施することになります。
 したがって、県の担当者は、可能な限り複数の人数で編成し、業務を分担して、訓練本番までに訓練参加者の事前の準備等を綿密に実施できる態勢を作るとともに、より高い訓練目標を達成できるようにすることを推奨します。

 第1回訓練担当者会議から訓練当日まではおよそ5〜6か月ありますが、訓練内容が確定するまでに時間を要し、訓練当日までの時間は思った以上に少ないのが現実です。
 しかしながら、国民保護共同訓練を実施すれば、地方自治体、警察、消防、自衛隊、医療機関等の初動対処能力が高まることは間違いありません。地方自治体は、いざというときのために、国との国民保護共同訓練に是非とも挑戦していただきたいです。