危機管理業務部 危機管理一課長
 松並 栄治

 皆さんは、「災害時多目的船」というものをご存じですか?
 災害時多目的船とは、大規模災害発生時に、医療活動や行方不明者の捜索・救助、人員・物資の輸送、被災者の支援(給食・給水、入浴)等に活用することができる多目的の機能を有する船舶のことです。
 今回は、その災害時多目的船における医療活動と被災者支援等について記述したいと思います。

〜デによる医療活動
 船の医療活動と聞いて思いつくのが、テレビドラマにもなった瀬戸内海で活動している診療船「済生丸」です。
 医療環境が整っていない瀬戸内海及び豊後水道の島々のうち、岡山・広島・香川・愛媛の4県に属する65の島々の住民の医療を支援する目的で、済生会が1962年に済生丸を就航させました。2014年に就航した「済生丸100」で4代目になります。
 済生丸には、レントゲン室や内科検診用の機器など、病院並みの設備が装備されており、岡山・広島・香川・愛媛の各支部が運営する病院の医師・看護師などが交代で乗り込みながら、島民の健康診断、内科の診療、救急医療などを担当しています。
 阪神・淡路大震災では、厚生労働省の要請により神戸に派遣されて医療活動に従事しています。
 病院船ということでは、現在の日本には存在しませんが、旧軍では、横浜の山下公園に係留されている氷川丸が第二次大戦時に病院船として運用されていました。世界各国に目を向けると、現在、主に軍事大国で大型の病院船が運用されています。
 病院船に関する研究・検証としては、陸上自衛隊野外手術システムを搭載した海上自衛隊輸送艦を停泊させ、陸上自衛隊の衛生隊災害派遣医療チーム(DMAT)などがチームを組んで、輸送艦への患者搬送や応急処置、安定化等の検証訓練を実施しています。また、民間フェリー内に国内型緊急対応ユニット「dERU」を搭載・開設し、人口呼吸器・血液透析装置・超音波診断機器・MRI搭載車両等を搭載、医師、看護師、臨床工学技士、事務職等の医療スタッフを乗船させ、災害時に病院船として運用可能かどうかの検証訓練を実施しています。

∩デによる被災者支援
 次に、被災者支援についてですが、大型フェリーの機能として宿泊・給食・給水・給電・入浴機能を活用して被災者を支援しようという研究・検証です。
 国では、停泊した民間フェリー上で、南海トラフ地震の発生から約3週間が経過した時点を想定し、陸上の避難所が不足した際、電気や水などライフラインが整った船舶が有効かどうか確認するねらいで訓練を実施しています。
 実災害では、熊本地震において、防衛省がチャーターした船「はくおう」により自衛隊の災害派遣部隊が熊本に派遣され、その後、八代港に停泊、避難者の避難所として使用されました。この船は元民間船でもあるため、通常のフェリー同様、個室やベッド、浴室やレストランを備えており、基本的には、避難所生活から一時的にでも解放されることを目的に1泊2日の利用とされました。

フェリーの特性を踏まえた検討
 大規模災害時にフェリーなどの民間船を使い、治療や介護が必要な災害弱者を収容する災害避難船(福祉避難所船)構想の実現に向けたフォーラムが開かれ、船舶の調達方法等の具体的な課題が指摘されました。
フェリー
【 大型フェリー(イメージ) 】

 フェリーの特性として、波による揺れがあり、車両甲板は、夏は暑く冬は寒い、油の臭いが強い、エンジン音がうるさく、全般的に暗いというものであり、船内は、廊下・階段が狭く、階段が急であり、エレベーターが狭いという、地上の福祉避難所とは正反対の環境です。また、車両甲板において電気を使用する際に100V電圧がとれないフェリーもあり、通常の家電や医療機器に電気を供給するためには変圧器を準備するなどの手間も必要になります。
 このように、地上の福祉避難所とは正反対であることから、これら船舶の特性を踏まえた検討が必要であると思います。