危機管理業務部 シニアアドバイザー
 大地 教文

 東日本大震災では、津波による被害が非常に多かったという印象を持っている方が多いと思います。
 総務省消防庁が発表している東日本大震災の最新報(第156報、平成29年9月8日)における被害状況では、死者19,575人、行方不明者2,577人、負傷者6,230人、住家被害全壊121,776棟、半壊280,326棟となっていますが、明治以降では、大正12年の関東大震災(死者・行方不明者約105,000人)に次ぎ、明治29年の明治三陸地震(死者・行方不明者約22,000人)に匹敵する極めて深刻な被害となっており、また、沿岸部の市町村の被害の多くが津波によるものと考えられます。

 津波による人的被害は、事前の避難等により軽減(被害ゼロも可能)することができます。しかしながら、警報等が出され、避難の指示等が発令されても避難しない人は大勢います。警報が出たからといって必ず津波が来るわけではなく、来ないこともあり、たとえ来ても高さがそれほど高くなかったりすることから、個々人では「今度も大丈夫だろう」と自分で納得することが多いようです。

 東日本大震災後に、岩手県、宮城県、福島県の沿岸市町村の住民11,400人に対して内閣府が行ったアンケート調査(内閣府ホームページ)によれば、
最初に避難したきっかけは何ですか」(複数回答可)という問いに対して、
●「揺れ具合から津波が来ると思った」45.6%
●「大津波警報を見聞きした」27.9%
●「周囲にいた人から避難するよう呼びかけられた」27.0%
●「家族が避難しようといった」21.9%
●「津波が来たという声を聞いた」17.7%
●「市町村や消防、警察の人から避難するよう呼びかけられた」17.5%
●「周囲にいた人が避難しているのを見た」16.8%
●「予想される津波の高さが高かった」15.1%
●「迫ってくる津波や土煙、水煙を直接見た」14.7% など

という結果でした。
 自分の体で感じた揺れ具合から行動した人が45%と最も多かったのですが、周囲の人や家族の呼びかけで避難した人が合せて50%近くいたことから、地域や家族で連携して行動しているところは避難をする割合が高いといえます。

 また、地震発生直後の行動として、「建物の外に出た後、あなたはそのまま津波からの避難をしましたか」という問いに対して、「避難した」と回答した人は66.5%でした。
 そのまま避難した人が、別の「あなたは津波に巻き込まれましたか」という問いでは、
●「安全なところから津波が来るのを見ていた」42.8%
●「目の前まで津波が迫ったが、巻き込まれなかった」21.9%
●「内陸部にいたので津波が来るのを見ていない」19.4%
●「「足首」、「膝」、「腰」のあたりまで浸かった」が合わせて7.3%
●「津波にのみ込まれたが、何かにつかまって流されなかった」1.1%
●「津波にのみ込まれて、流された」0.8%
●「車で走っているときに車が津波に浸かった」1.6%
●「車で走っているときに車ごと流された」0.6%
●「覚えていない、わからない」2.5%

という結果でした。
 半数近い人が安全な所から津波が来るのを見ていましたが、屋外に出てそのまま避難しても津波に巻き込まれた方も相当数いたということです。

 直ぐに避難行動に移ることが生き残る道であり、避難は時間との勝負ということを再認識し、非常時持出袋や家族の避難時の行動など、避難の準備を平素から心掛けるとともに、家族をはじめ地域や行政が連携して、津波による犠牲者を減らすことができるよう、訓練を継続して実施する、訓練に参加することが大切です。

 国としても津波対策を総合的・効果的に推進するため、平成23年6月に「津波対策の推進に関する法律」を制定し、その中で、11月5日を「津波防災の日」と定めています。
 その「津波防災の日」には、全国各地で防災訓練の実施やシンポジウムなどが開催されているところですが、内閣府では平成26年から毎年、津波防災の日を中心に、全国各地で地方自治体と連携(主催)して、住民の参加によるシェイクアウト訓練や津波避難の実動訓練などを「地震・津波防災訓練」として実施しています。
大地_No.08_津波避難訓練04
【 過去に実施された津波避難訓練の様子 】

 弊社は、平成26年から毎年、この「地震・津波防災訓練」を実施する市町のうちの4〜6コ市町の訓練の企画・運営などの支援を担任させていただいています。その訓練に対する地方自治体の取り組み状況は様々ですが、訓練終了時には、いつも「訓練をやってよかった!」と感じます。
 今年も、実施市町村の担当者様や住民の皆さん等とともに津波避難訓練を行い、津波による犠牲者を1人でも減らすことに寄与できるよう、ご支援ができればと思っています。