危機管理業務部 主任研究員
 安藤 正一

 以前、読売新聞朝刊の「気になる値」という欄で、「家庭での防災対策費」という記事が掲載されているのを目にしました。
 その概要はというと、「住友生命が2017年12月に、全国の男女1,000人を対象に行った防災に関する調査によると、1年間で防災対策に支出した金額は平均3,319円で前年より818円増えて、新たに取った対策では、「非常用飲料水の備蓄」、「非常用食料品の備蓄」が上位を占めた。他方で、防災対策の費用が「0円」と答えた人が57.8%もいて、特に20、30歳代は65%以上であった。」というものでした。

 私は、ここ数十年間、大地震や洪水等の自然災害に見舞われたことがない首都圏のある都市で5年間防災担当者として勤務し、その地域内の各地で多くの住民に対して防災講話を行って、地震などの自然災害への備えの重要性を訴えてきました。その際に、参加者に地震などの自然災害への備えの状況についても確認してきましたが、残念ながら、多くの住民が、防災への備えは必ずしも十分ではないことを実感しました。
 その背景には、日本各地で一定の頻度で大地震が発生し、また、毎年のように大雨による洪水や土砂崩れが発生していても、自分が住んでいる地域が、長らく自然災害による被害を受けていなければ、心のどこかで、「この地域は自然災害に見舞われる可能性が低いだろう」という漠然とした安心感のようなものがあって、結局、防災への備えがなおざりになっているのではないかと懸念しております。

 2016(平成28)年4月の熊本地震で被災した益城町の83歳の男性が「まさかここで大地震があるとは誰一人思わなかった。想定外も想定外だ。」と、あるテレビのインタビューで答えていましたが、大地震に見舞われてからでは遅いのです。
 近年、家庭での備えとして、ローリングストック法による「非常用飲料水や食料品の備蓄」が推奨されています。長期保存が可能な「非常用飲料水」や「非常用糧食」を購入しようとすると、割高なので、何となく後回しになってしまうのですが、このローリングストック法は、日頃の買い物において、通常のペットボトルや長持ちする食料品を少し多めに購入しておき、古い物から飲食して、使った分を必ず補充するという非常に簡単で安価な方法です。今からでも自然災害に備えようとお考えの方々に是非お勧めしたい家計に優しい防災対策です。
安藤_No.02_非常用備蓄食料03
【 非常用飲料水や備蓄食料の一例 】