危機管理業務部 危機管理一課長
 松並 栄治

 近年、スマートフォンやタブレット端末等の爆発的な普及に伴い、Facebook、Twitter、LINE、InstagramなどのSNSの利用がもはや当たり前と言っていいほど広まっています。企業や国などにおいても、様々な分野でSNSを利用した情報発信等を積極的に行っています。
 SNSを代表するものの一つとしてTwitterが挙げられます。皆さんの中で利用されている方も多いことかと思いますが、一方で、利用したことがないという方もまだ多くいらっしゃるかと思います。ただ、利用したことがないという方でも、「ハッシュタグ」という言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
松並_No.22_ハッシュタグ
【 Twitterに投稿する際に用いられるハッシュタグ 】

 「ハッシュタグ」とは、Twitterを中心としたSNSで、投稿内のタグとして使われるハッシュマーク「#(半角シャープの記号)」を入れたキーワードのことを指します。
 自分のツイートの中に「#○○」と入れて投稿すると、同じハッシュタグが付けられた投稿を、ハッシュタグを検索することでまとめて閲覧できます。例えば、「#災害」といったハッシュタグで検索すると、災害に関する投稿を検索画面等で一覧でまとめて見ることができます。つまり、ハッシュタグは、同じようなタグ付きの投稿を収集することができ、それが存在する全投稿を検索できるのです。

 このハッシュタグの持つ収集と検索の機能を利用し、自治体の中には、大規模災害や国民保護事案が発生した際に、被害情報の収集手段の一つとして、不特定多数の人から被害情報をTwitterで発信(例えば、ツイートにハッシュタグ「#●●市災害」を付けて発信)してもらい、自治体側で「#●●市災害」の付いたツイートを検索して被害情報を収集するということを実施しているところもあります。
 これについては、収集した(寄せられた)情報の真偽をしっかりと判断する必要はありますが、情報収集手段が乏しい発災当初の段階では、非常に有力な情報収集手段となり得るものではないかと思います。
 実際に、最近のテレビの報道番組では、災害や事故、あるいは自然現象等が発生した瞬間やその後の状況などをスマートフォン等で撮影した映像が「視聴者提供(投稿)映像」として放送しているのをよく目にします。災害や事故、あるいは自然現象等は、いつ・どこで・どのように発生するか分かりません。テレビ局は、発生時の模様や現場の状況などを詳細に伝える、いわゆる「スクープ映像」を抑えるためにカメラクルーが現場へ急行するものの、やはりどうしてもある程度の時間はかかってしまいます。しかし、その模様をその場に居合わせた方や付近の住民などにスマートフォン等で撮影した映像を提供(投稿)してもらえれば、(撮影内容の真実性等を判断するなどしたうえで)リアルタイムに近い映像(情報)を迅速に収集・提供(放映)することが可能となります。

 さて、「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会」の開催まで2年、その前年の2019年には「ラグビーワールドカップ2019」が日本で開催されます。
 各地の競技場において、国内はもとより世界中から集まった数万人もの人々が各種スポーツ競技を観戦することになるわけですが、それだけ多くの人が集まった競技場において、大規模地震等の自然災害やテロなどにより多くの死傷者が発生してしまった場合には、国や自治体の信頼は失墜してしまうことにもなりかねません。
 そのため、現在進行中の各種事案の発生を想定した(図上・実動の)対処訓練はもとより、これからも開催直前まで数多くの訓練や研修等が、国または自治体レベル等で実施されるものと思われます。
松並_No.22_競技場
松並_No.22_競技場
【 各種スポーツ競技の会場となるスタジアム等の大規模集客施設(※イメージ) 】

 その対処手段の一つとして、被害情報を収集する際に、その競技場に集まった人々に、その場で見た被害情報や事案の兆候をTwitter(「#●●競技場災害」)で発信してもらい、現地対策本部(仮称)で「#●●競技場災害」の付いたツイートを検索して被害情報を収集するという方法が考えられるのではないでしょうか。
 この方法では、ハッシュタグの要領等についてしっかりと広報する必要はありますが、競技場に来た善意の人々からの情報とするために、例えば、入場券にハッシュタグについての記述を入れる競技場の入場口に人目に触れるような看板を設置する電光掲示板に掲示して広報する、といったことで周知することができるのではと思います。

 冒頭でも述べたように、情報の真偽をきちんと判断する必要はありますが、情報収集手段が乏しい発災当初の段階においては、ハッシュタグによる災害情報の収集は有力な手段となり得るのではないかと思います。
 なお、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会やラグビーワールドカップ2019には多くの外国人の来日が見込まれるため、外国人用として英語のハッシュタグを準備することも有効ではないでしょうか。