危機管理業務部 危機管理一課長
 松並 栄治

 災害により行方不明者が発生した際に、その行方不明者を鋭い嗅覚を使って捜索する犬のことを災害救助犬(レスキュードッグ)と言います。
松並_No.21_災害救助犬
【 災害時に行方不明者を捜索する災害救助犬(※イメージ) 】

 その始まりは、山岳救助に犬を使っていたスイスではないかと言われており、ヨーロッパでは災害救助犬の育成が盛んに行われています。
 中でも、スイスのアルプスにおいて、雪中遭難救助犬として40名以上の遭難者を救出したセントバーナード犬のバリー号が有名です。
 吹雪になると、バリーは遭難者を探すために出動します。そして、鋭い嗅覚を使い雪崩等で埋まった遭難者を捜索し、自分の体を遭難者の上に乗せて遭難者の体を温めて救出していたということです。
 ある日のこと、遭難したスイス兵の捜索に出動したバリーは、いつものように兵士の体を温めようと自分の体を兵士の上に乗せていました。しばらくすると、バリーの体温のおかげで兵士は息を吹き返したのですが、兵士は自分の上に乗っている大きな犬が自分を食べようとしているオオカミだと勘違いし、持っていた銃剣でバリーの腹を刺してしまいました。結果、その傷によりバリーは亡くなってしまい、それがバリーにとっての最後の救助になったということです。
 災害救助犬としては、このバリーのようなセントバーナード、あるいはシェパードやレトリバー等の大型犬が望ましいとされていますが、小型犬は小型犬で、大型犬では入り込めないような隙間に入り込んで捜索することが可能というメリットもあります。

 災害救助犬と同様に人の捜索を実施するという点で、警察犬と比較されます。
 警察犬は、特定の人の臭いをたどって特定の人を捜索しますが、災害救助犬は、空気中に漂う不特定の人の不特定の浮遊臭をたどって不特定の人を捜索するという特徴があり、災害救助犬が遭難者を捜索する場合は、人間共通の臭いをたどって、感知すると吠えるなどして人に教えて救助に繋げるそうです。

 災害救助犬の訓練は、「座れ」、「伏せ」、「待て」、「来い」、「後ろへ」などの服従訓練から始め、ボールでのじゃれ遊び〜犬をじらして犬が吠えたらボールで遊ぶ〜少しだけ隠れる〜もう少し離れるなど、徐々に訓練の段階を上げていくということであり、災害救助犬の認定審査に合格してからも服従訓練は毎日続け、捜索訓練も様々な場所、年代、性別を問わず、各種遭難者に対する捜索訓練を行い、犬にいろいろな経験を積ませたうえで出動に備えるということです。

 大規模地震などの倒壊家屋での捜索では、災害救助犬3頭、指導手3名、隊長1名がチームになって出動します。捜索では、1〜2頭が捜索、残りの犬が待機し、1頭につき1名の指導手が付きます。
 担当の犬が捜索していない指導手は、隊長と捜索中の犬を観察し、1頭が行方不明者発見の反応を示したら、同じ場所をもう1頭に確認させ、2頭目の反応が不確実であれば3頭目に確認させます。2頭が同じ場所で反応を示したら、その場所に行方不明者がいる確率は高いということで、消防・警察・自衛隊などの救助隊にその位置を知らせて救助作業を要請します。
 地域を災害救助犬で受け持った場合、犬が数頭いれば偵察班と確認班に分け、偵察班は、先行して人の臭いがあるか浅く広く捜索しながら進み、何らかの臭いを感じたら目印をつけて先に進みます。確認班は、印のない場所は通過し、印の着いている場所のみを深く詳しく捜索します。救助犬の頭数が少なければ、往路は偵察に留めて復路に確認をするなど、犬のスタミナの消耗を防ぎながら捜索をしなければなりません。
 災害救助犬1頭の連続した捜索可能時間は20〜30分程度であり、3頭の災害救助犬が交互に捜索と休憩をすることで、数時間の捜索が可能になるということです。

 日本では、1990年からジャパンケネルクラブが活動を開始し、全国災害救助犬協会が日本初の「救助犬協会」となりました。日本では現在、大きな災害救助犬組織が4団体(全国災害救助犬協会、ジャパンケネルクラブ、日本救助犬協会、日本レスキュー協会)あり、都道府県レベルで独自に活動している協会もありますが、認定基準には大きなバラつきがあり、災害救助犬に関して日本は欧米に比べると後進国だということです。
 災害救助犬が活躍する機会がないのが一番良いことなのですが、今後、日本でもたくさんの災害救助犬が育ち、いざという時に災害現場等で大いに活躍してくれるようになれば、これほど頼もしいことはないですね。