危機管理業務部 主任研究員
 福島 聡明

 中央防災会議防災実行会議「平成30年7月豪雨による水害・土砂災害から避難に関するワーキンググループ」において、平成30年7月豪雨を教訓とし、避難対策の強化について検討され、平成30年12月に「平成30年7月豪雨を踏まえた水害・土砂災害からの報告のあり方について(報告)」がとりまとめられました。
 この報告の内容を踏まえ、地方公共団体が避難勧告等の発令基準や伝達方法を改善する際の参考となるよう、平成31年3月29日に「避難勧告等に関するガイドライン」が改定、公表されました。
警戒レベル_1
【出典】内閣府防災情報のページ「警戒レベルに関するチラシ」

 今回は、内閣府防災情報のページで一般に公開されている内容を基に、この改定の概要についてご紹介できればと思います。

【警戒レベルを用いた避難勧告等の発令について】
 警戒レベルとは、災害発生のおそれの高まりに応じて住民等がとるべき行動と当該行動を住民等に促す情報とを関連付けたものです。
 住民等が情報の意味を直感的に理解できるよう、防災情報を5段階の警戒レベルにより提供し、とるべき行動の対応が明確化されました。
 特に、警戒レベル3は「高齢者等避難」、警戒レベル4は「全員避難」とされ、避難のタイミングが明確化されました。警戒レベル5の「災害発生情報」では、命を守る最善の行動を促します。
 各警戒レベルに対応する行動と情報は、下図のとおりです。
警戒レベル_2
【出典】内閣府防災情報のページ「警戒レベルに関するチラシ」

 警戒レベル5の「災害発生情報」と警戒レベル4の「避難指示(緊急)」は、いずれも、法的には災害対策基本法第60条に基づく指示ですが、警戒レベル5は「既に災害が発生している状況」である一方、警戒レベル4の「避難指示(緊急)」は災害が発生するおそれが極めて高い状況等(災害が発生しているものの、市町村が災害の発生を把握していない場合を含む。)であり、状況が大きく異なります。
 警戒レベル4の「避難勧告」で避難することが基本である中、警戒レベル4と警戒レベル5の両方で同じ「避難指示(緊急)」という名称を用いた場合、警戒レベル5が、災害が実際に発生している段階であるとの危機感が伝わりにくくなるおそれがあり、警戒レベル5の「避難指示(緊急)」を待ってから避難行動をとったために避難の遅れを招くといったことが懸念されるため、警戒レベル5では「避難指示(緊急)」という言葉を用いず、既に災害が発生し最大級に危険が迫っていることを短く、直感的に伝えられるように「災害発生情報」という表現にされたとのことです。

 なお、住民自らが行動をとる際の判断の参考となる情報として、下図のように、指定河川洪水予報、河川の水位情報、大雨警報、土砂災害警戒情報、土砂災害危険度分布などが、警戒レベル相当情報として提供されます。
警戒レベル_3
【出典】内閣府防災情報のページ

【内容の追加・充実】
❶学校における防災教育・避難訓練
 水害・土砂災害のリスクのあるすべての小学校、中学校等※において、毎年、梅雨や台風の時期を迎えるまでを目途に、避難訓練と合わせた防災教育を実施するとしています。
(※浸水想定区域内・土砂災害警戒区域内に位置し、水防法・土砂災害防止法に基づき地域防災計画に位置づけられた施設)

❷地域における防災力の強化
 各地域において、自助・共助の取組が適切かつ継続的に実施されるようにするため、防災の基本的な知見を兼ね備えた地域防災リーダーを育成するとしています。

❸高齢者等の要配慮者の避難の実効性の確保
 防災(防災・減災への取組実施機関)と福祉(地域包括支援センター・ケアマネージャー)の連携により、高齢者の避難行動に対する理解を促進するとしています。

 これから本格的な梅雨期となり、各地で大雨などによる災害が発生しやすい時期になります。
 これら避難等に係る情報をしっかりと認識し、自らの命は自ら守る意識を持つとともに、地域等全体で「逃げ遅れゼロ」に向けた取り組みの推進が重要となりますね。