危機管理業務部 危機管理二課長
 松田 拓也


 前回の記事「初めての原子力防災」そして「初めての原子力防災(情報伝達要領の確立)」では、原子力防災は情報提供が上手く出来るかが重要なポイントであり、適切な情報伝達方法を確立することが重要であるということを書きました。
 今回は、住民に伝達すべき内容と伝達手段の特徴についてご紹介したいと思います。

 近年、原子力施設周辺の自治体においては、原子力発電所等が大規模な事故を起こした際に使用する「広域避難計画」という計画を整備しています。
 この広域避難計画というのは、「〇〇1丁目の人が国道◇◇号を通って、▲▲の汚染検査場所を通り、■■避難所に避難する。」といった細かい事項まで決められています。
 原子力施設周辺の自治体では、各世帯にこの広域避難計画を基にしたパンフレットを配布しており、原子力事故時に各世帯がとるべき行動について事前の周知を図っています。

 このような取り組みが進められていることを前提にすると、緊急時に優先的に住民に伝達すべき内容は以下の2点に限定されます。
  〇前の計画通りに避難が出来るか否か
  避難のタイミング(時間)
 上記2項を如何に迅速かつ正確に伝達するかが重要になってきます。
 計画通りの経路が使用でき、避難所や汚染検査場所にも変更がない場合は「○○丁目は□□時□□分から、事前の計画通りに避難を開始してください。」と1つの文章を伝達するだけでよいことになります。
 道路が使用できない、避難所が使えないなどの場合は変更事項を伝達する必要があるため、文章が長くなります。

 さて、このような内容を住民の方々に適切に伝える方法としてはどのような手段があるのでしょうか。
 自治体から住民に伝達する手段としては、防災行政無線、エリアメール、ラジオ、テレビなどが考えられます。これらの手段は、伝達範囲や情報量あるいは耐災害性が異なっており、その特徴を十分に把握したうえで運用すること重要です。
 主な伝達手段とその特徴は下表のとおりです。
情報伝達手段の特徴2  なお、これらの特徴は自治体の整備状況によって異なることをご承知おきください。
 例えば防災行政無線の伝達範囲を限定的としているのは、防災行政無線は沿岸部や河川周辺に整備されることが多く、その他山岳部や内陸部ではあまり整備されていないことを加味して判断しています。
 テレビの情報は3.11の際にも住民にとって重要な情報収集ツールであったことが分かっていますが、テレビは、起きていることの全般を掴むことに向いていますが、丁目単位等の細部情報の入手には向いていないことから、原子力防災において住民が必要とする情報を適切に伝達する手段としては不十分であると考えます。(Lアラート等のデータ放送を利用すると改善される。)

 以上のことから、原子力防災で伝達しなければならない、〇前計画通りか否か、避難のタイミングを伝達する上で、事前計画通りであれば、ほぼ全ての手段で伝達できるものと思われます。一方で事前計画通りでない場合は情報量が多くなるため、登録制の防災メールやSNSなどの媒体を通して伝達することが適切であると考えます。
 まずは、自治体から様々な手段で住民に伝達を行い、細部については、逆に住民から自治体に確認をとるといった方法が理想的であると考えます。

 以上、理想的な話をしましたが、問題は、主体的に情報の確認をとることが出来ない方にどのように詳細な情報を伝達するかということです。
 具体的には、メールやSNS、自治体ホームページ検索等の操作が出来ない方です。
 これらの方にどう伝えていくかが、大きな課題であり、共助の力が求められるところであると考えます。前回の記事で紹介した地域における「情報伝達要領の確立」はこのような場面で役立つことになります。

 地域コミュニティで情報伝達要領を確立するためには、まずは共助の力で伝達をしなければいけない対象者はどこにどのくらいいるのかを確認することから始めてはいかがでしょうか。