危機管理業務部 危機管理一課長
 松並 栄治


 現在、新型肺炎(新型コロナウィルス感染症)の感染拡大による医療崩壊の懸念から、病院外に設置したテント内やドライブスルー型の検査等、医療に関する各種試みが実施されています。
 今回の新型肺炎に限らず、大規模災害の発生に際しては多くの傷病者が発生するため既設の病院では足りず、野外の病院・救護所等を開設して対応しなければなりません。
 以前、大規模災害の発生時に、医療活動や行方不明者の捜索・ 救助、人員・物資の輸送、被災者の支援(給食・給水、入浴)等に活用することができる災害時多目的船について投稿したことがありますが、その他、野外型の病院・救護所に活用できる器材やシステム等について記述したいと思います。

1 船舶による医療活動
  新型肺炎流行への対応として、米国では病院船(コンフォート)を接岸させ、そこに通常の患者を収容し、それにより余裕ができた病院に新型肺炎患者を入れるということが実施されました。
日本にも、瀬戸内海で活動している、レントゲン室や内科検診用の機器など、病院並みの設備を装備している診療船「済生丸」というものや、防衛省がチャーターしたフェリーに国内型緊急対応ユニット「dERU」を搭載し、人口呼吸器・血液透析装置・超音波診断機器・MRI搭載車両等を搭載、医師、看護師、臨床工学技士、事務職等の医療スタッフを乗船させ、病院船として運用する試みも実施されています。
  しかし、船舶ということで沿岸地域による活動に限定されます。

2 車両による医療活動
  医療活動に使用する医療器材や発電機をマイクロバス、トラックやトレーラー等に搭載し、それを医療システムとして組み合わせ、病院・救護所として使用できるものがあり、胃部検診車、胸部検診車、内視鏡検診車、マンモグラフィー検診車、CT搭載車、MRI搭載車等や、米国で運用されている野外で血液透析ができるトレーラー等を組み合わせた医療システムを展開し、既存の病院・救護所を補うというものです。
  また、車内での手術、緊急処置を可能にする特殊医療救護車(赤十字)というものや、自衛隊の野外手術システムというものがあります。

3 テントによる医療活動
  軍隊には、野戦病院を開設するための病院天幕というものがあります。
  一例では、神奈川県の米軍キャンプ座間には250ベッドの病院天幕4セットを備えており、自衛隊においても軽量でコンパクトな10ベッドの天幕を連結して運用する病院天幕を衛生部隊が装備しています。
  天幕(テント)を建てて、その中に病院機能を準備して医療活動を実施するというものであり、普段は倉庫にしまっておいて、有事に学校の校庭や空き地に開設することができ、2項の胃部検診車、胸部検診車、内視鏡検診車、マンモグラフィー検診車、CT搭載車、MRI搭載車等と組み合わせてシステムとして活用ができるものとなります。有識者によると、ある程度の病院天幕を自治体や主要な病院が装備し、有事に運用することが必要とのことです。

4 コンテナ病院による医療活動
船舶や鉄道などで物資の輸送に使われるコンテナを用いて作られる建築用コンテナを使用した診療所・救護所を開設し、患者は診察まで自家用車で待機するなど人との接触を最低限に防ぎ、コンテナ内で診察するものであり、3項のテントと同様、各種検診車と組み合わせてシステムとして活用ができるものと思います。
  中国の武漢市は「コンベンションセンター」「体育館」「ホール」等の広い屋内施設をコンテナ病院として医療活動を実施しているということです。広い屋内施設にベッドを並べ、パーテーションにより区切った病室をつくり、野戦病院として使用しているということです。
キャプチャ

  多くの傷病者が発生するため既設の病院だけでは対応できない状況になった時に、大きなアリーナ、体育館等に病室を開設し、各種検診車や野外手術システム等を連結し、医療システムとして活用することにより多くの患者を収容できることになります。

5 最後に
  危機管理において、有事に迅速に対応するためには、平時から準備しておくことが重要であり、今回の新型肺炎に限らず、南海トラフ巨大地震等大規模災害の発生に備え、病院のみでは医療活動に限界がきた場合を想定し、自治体や主要病院等で各種器材を普段から準備し、速やかに野外病院を開設できるようにしておくことが必要です。