危機管理業務部長
山本 忠雄
私は、職場である東京都千代田区(東京メトロ半蔵門線:半蔵門駅)まで地下鉄を利用して通勤しています。
最近、人身事故による電車の遅れに2度遭遇しました。2度とも、家を出る前にテレビで「人身事故で運転が止まっている。」ことを知りながらも、「とりあえずは駅に行ってみる。」ということで駅まで行きました。いずれも8時25分頃のことです。
1度目の時は初めてのことなので、どんな様子なのだろうと興味深々でしたが、駅周辺にはたくさんの通勤客が集まり、バス停には300m以上とも思われる長蛇の列、タクシーを待つ人、別の交通手段を求めて駅から離れて行く人など様々でした。駅付近には警察官が何人か出て警備に当たり、人身事故で運転が止まっていること、運転再開の目処は立っていないことを繰り返し案内していました。
私はいったんバスの列に並びましたが、これではいつ会社に着けるか分らないと思い直し、自宅近くのバス停からバスに乗りました。途中の駅に着いた時には10時近くになっていましたが、その時にはもう運転再開となっていたので、それに乗り換えて出勤しました。
2度目の時も駅周辺の様子は1度目と同じようなものでした。やはり警備の警察官は運転再開の目処は立っていないと言いましたが、私は、ともかく駅構内に行ってみようということで改札を入り、止まっている電車に乗り込みました。すると、電車内では「まもなく出発する」とのアナウンスが流れ、10分もしないうちに発車したのです。電車はガラガラの状態でしたから、駅の外にいた人達には知らされなかったのだろうかと気になったものです。
この2度の体験から感じることは、駅の対応の拙さです。
その一つは、事故処理に時間的な目標を持っていないのではないかということ。
人身事故などであれば過去の事故処理の例を分析することにより、どれ位の時間で運転再開ができるかということは目処が立てられるでしょうし、事故処理から運転再開までの駅員、消防、警察などの業務処理の手順も規定することができると思います。その目標を持つことによって、関係者の業務処理や連携要領も出来上がり分の一ではなく、全く違ったものになると考えます。
もう一つは、事故処理、運転再開に対する駅の責任感の無さです。
駅構内での事故であることから、当然、運転の早期再開、利用客の利便を第一に考えることが駅の責務なのに、実際に駅の外で案内をしているのは地元警察署の皆さんでした。予め役割分担が決められているのかも知れませんが、それにしても駅が駅内外の人に状況を説明するという行動をもっとしっかり執ることが必要ではないかと思います。少なくとも利用客がこのまま待つか、別な行動を執るかという判断材料を提供し、情報不足から間違った行動を執らないようにしたり、不安やストレスを軽減してあげる気遣いが必要だと考えます。
今回のような事例においては、業務継続計画(BCP)を持ち出すまでもなく、どれ位の事故だったら何時間以内に処理を完了するといった目標が必要だと思います。
自治体の災害対応においてもまた、本部運営に係る業務や災害応急対策などについて、「いつまでに」「どのように」という目標を設定することが組織の努力を集中させ、災害対応を効果的に進めるうえで極めて重要なことであると考えています。