危機管理業務部 防災課長
岩崎 健次
今年の大型連休も終わりました。真ん中の平日2日間を休めばトータル9日間の久々の長い連休でした。終わってしまえば「お疲れ様」ということですが、その間危ない目にあって肝を冷やされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
成熟した現代日本社会の中であっても、私たちはいつも危険と隣り合わせにあると言っても過言ではありません。そのような視点から、身の周りで起きそうな「危機」とその「管理」について、皆さんとともに考えていきたいと思います。
さて、もともと「危機管理」は、広範で深い意味を持った言葉だと考えています。身の回りの危機(命や生活を脅かすこと、状態)には、自然界で猛威を振るう「地震、雷、台風、洪水、火事・・」、偶発性の大きい「交通事故、飛行機事故、インフルエンザ、医療事故・・」、更には意図的な「オウム真理教のような大量殺りく事件」など、多様な様相があります。そのようなことから、常日頃から「危機」とうまく付き合い、お茶の間に「危機」の話題を提供し、対応のノウハウを共有することが重要かと思います。
今回は、連休最初の4月29日に関越自動車道で発生した「高速ツアーバス事故(46名死傷)」を取り上げてみたいと思います。
事故は、連休最初のニュースとして取り上げられ、今でも現場の光景を想いだすほどショッキングなものでした。
大型バスの夜間遠距離運行は、費用対効果の面から人気の旅行スタイルとして定着しています。その割にこの種のバス事故は、今までにもかなり発生している実態があり、事故が起きてからその対策に追われているように思われます。
新聞紙上で追求されているように、運転手を管理し、運行計画を作成したバス会社がその一義的な管理責任を負うことになるのですが、直接的な事故原因となった「運転手の過労と気の緩み」についてもしっかりメスをいれることが必要です。

< 夜間でも多くの車両が行き交う高速道路 >
この点を含めてその原因を分析すれば、最も重大な原因として、「組織」と「個人」の相互の関係を取り上げることができます。勤務計画や運行計画等の形の管理だけではなく、「組織の個人に対する理解」と「個人の組織や社会への責任感」に注目する必要があります。今回の場合は、「臨時的な雇用」による運用であったと社長が発言しています。これでは到底、相互の信頼感に基づく安全管理・危機管理は機能しないと考えられます。信頼感を深めるためは、道路環境や体調管理、勤務体制などに関する会社側と運転手側の「情報共有」と日々の「安全に対する取り組みと改善」の積み重ねによってのみ達成されるものと考えます。管理者と運転者の「フェース・トゥ・フェース」の体制づくりは、危機管理の基本事項と考えるべきだと思います。
教訓として、「危機管理には奇策はなく、日々の地道な努力により、ソフト面・ハード面から安全な状態を具体化する」ことが求められるものと思います。国土交通省や警察の規則や取締りも必要なことではありますが、根本的に職場全体として、「人命を預かる乗り物」を管理・運用する組織と個人の責任と意識について再度見直してみることが必要になります。
最後に、バスの乗客として自らが危機から逃避する「自助」の対応を付け加えます。
ニュースでも報道されていましたが、運転手の行動に「疲れ」の兆候を見たとき、勇気をもってこれを正す手段を考えるか、そこから「避難」することも選択肢として考えておくことも必要であると考えます。
大型高速バスは「多くの乗客を高速で移送する」特性上、事故災害のみならず、バスジャックや火炎瓶事案などと同様、危機管理上重要な対象とされています。今後、高速バスの耐衝撃性などの技術的な課題や運転手の管理手法、体調管理を含めた本社との連絡体制の課題等を解決していく必要があると思われます。