危機管理業務部 主任研究員
 大地 教文

 自衛隊を定年退職し、自治体等において防災・危機管理の業務を仕事として就職を希望・予定している陸海空の自衛官を対象として、「防災・危機管理研修」が陸上自衛隊仙台駐屯地において実施されました。
 この研修は、自衛隊の援護教育の一環として年に2回、約1ヶ月間、場所はその都度変わりますが、毎回30数名の幹部自衛官を対象に実施されているものです。
 本研修の支援を弊社が受注し、今回は私も2回仙台に行き、教育の一部を担任させて頂きました。

 私が担当した教育は、ロールプレーイング方式の図上訓練であり、訓練日(6月13日・金曜日)の午前9時に、神奈川県西部地震が発生したことを想定として、地震発生直後の自治体の災害対策本部事務局における応急対応活動を訓練しました。
 訓練参加者である35名の陸海空の幹部自衛官は、自治体の災害対策本部事務局における活動要領等を習得するため、演習部(プレーヤー)である県災害対策本部及び市災害対策本部の事務局要員と、統制部(コントローラー)の状況付与班要員に分かれ、終始真剣に取り組んでいました。
01_県災対本部
<演習部:県災害対策本部>

02_市災対本部
<演習部:市災害対策本部>

03_状況付与班
<統制部:状況付与班>

 私は、某市(場所は小田原市を使用)災害対策本部長を兼ねて訓練指導官として参加しましたので、事務局活動を客観的に見ることができました。
 実は私も元自衛官であり、自衛隊を定年退職後は、某県の防災・危機管理担当部署に勤務していた経験があります。当時のことを思い出しながら訓練を見ていましたが、自治体(県庁)勤務時には見たこともない雰囲気や光景でした。副市長役である事務局長以下の本部事務局員や状況付与する各係全員が現役の自衛官であるためか、自衛隊で日常的に使用されている言葉(用語)が次々に出てきます。
 特に、海上自衛官が「1230(ヒトフタサンマル)の第2回災害対策本部会議・・・」と言うと、陸上自衛官は「1200(ヒトニマルマル)本部事務局班長会議を開催する。」と指示していました。このような数字が出るたびに、自治体に行けばこの会話はないなぁと、懐かしい思いで聞いていました。

 当然のことですが、訓練に参加している自衛官は真剣です。数少ない機会をフル活用して活動要領等を習得するとともに、自らの役割を果たそうと積極的に行動していました。また、必要な情報等を収集するため、積極的に統制部や県・市災害対策本部に聞いていました。これについては、これまでに培った経験等を糧に、初めての業務にも自分なりのイメージで活動できているところは、さすがに自衛官だと感じました。
 ところが、状況が次から次へと付与(事態の進行に応じて状況付与の件数が増加)されはじめ、応急対応係のところへ電話で状況が付与されたり、その対応中あるいは電話受け記録票への記入中に次の状況が入りはじめると、事務局内はもとより班内ですら情報の共有がほとんどできない状態となっていきました。
 これは、自らの役割を自分だけで果たそうとして抱え込んでしまったことが原因かと思われますが、電話などが集中し始めた際には、業務の分散処置や対応の優先順等をリーダーが指示することが重要になります。自衛官チームでもこのような状態に簡単になってしまうことに、ある意味でホッとしたとともに、班内等の状況を把握し、適切に処置等の指示を行う難しさを再認識した次第です。
 自分の業務の状況を適時リーダーに報告するなど情報を共有し、業務をチームで遂行していくチーム力の大切さ訓練の必要性・重要性はこれからも変わらないと思います。

 この研修受講者の大半は、近い将来全国の自治体等において活躍され、地域の防災力向上に貢献されると思います。
 私も今回の研修支援の一端を担うことができたことを嬉しく思うとともに、35名の皆さんの今後のご活躍に大いに期待しています。