危機管理業務部 主任研究員
福島 聡明
9月1日の「防災の日」には、各地で防災に関する様々な訓練やイベントが行われ、その模様をテレビでは、先に内閣府が発表した「南海トラフ地震による被害想定」と関連付けて盛んに放送されていましたので、皆さんもご覧になったことかと思います。
当社も、支援業務の一環として、首都圏の某自治体が実施した「避難所訓練」をご支援しました。
この訓練は、休日の昼間に、東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の地震(首都直下地震)が発生、当該自治体では震度6強を観測したとの想定で、自治体職員・自治(町)会・PTA等及び地域住民等を対象とし、避難所の開設・運営等に係る各種訓練が、2日間(避難所での宿泊訓練を含む。)にわたり実施されました。
訓練に参加された皆さんは、この種の訓練に参加するのが初めての方がほとんどだったということもあり、何を・どのようにしていいか分らずに悩む場面なども見受けられましたが、終始真剣かつ熱心に訓練に取り組んでおられました。
< 避難所の開設・運営訓練の様子 >
この訓練をご支援した際に感じた所見等も踏まえ、本稿から数回にわたり、「避難所の開設・運営等に係る重要事項等」をテーマに、避難所の意義、避難所の開設・運営等における基本的事項や課題等について考えていきたいと思います。
今回は、「避難所の定義及び避難所の種類」についてです。
1 避難所とは
そもそも「避難所」とは、どういった所なのでしょうか?
避難所とは、地震等による家屋の倒壊、焼失などで被害を受けた人や、現に被害を受けるおそれのある人を、一時的に学校や公民館などの建物に受入れ、保護するために設置する施設のことです。
なお、ここで重要なことは、被害を受けた人や、現に被害を受けるおそれのある人には、地域内で働く人や街に来ている人などの帰宅困難者も含むという点です。
そのため、現在、国、地方公共団体(首都圏)、民間企業等では、平時における準備や災害時における行動指針(帰宅困難者をどこに・どのように受け入れるか、どのような支援が必要となるのか等)を明確化するとともに、東日本大震災の教訓及び顕在化した課題や問題点等を踏まえた対策の検討や訓練等、「帰宅困難者対策」に係る各種取組みが進められています。
2 避難所の種類
避難所は、大きく以下の3種類に区分されます。
(1)一時(いっとき)避難場所
災害時の危険を回避するために最初に避難する場所
指定された避難場所へ避難する前に、近隣の避難者が一時的に集合して様子を見る場所又は避難者が避難のために一時的に集団を形成する場所のことです。
広場、公園、空き地、学校のグラウンド、神社・仏閣の境内等、建築物がなく、集合した人々の安全が確保されるスペースを有する場所(小規模な場所)が指定されていることが多く、主に近隣の地域で割り当てられています。「一時集合場所」とも言います。
(2)広域避難場所
一時避難場所への避難が危険・困難になった場合に避難する場所
大地震時に発生する延焼火災やその他の危険によって地域全体が危険になったときに、避難者の生命を保護するために必要な面積などの十分な条件を有する大規模な場所(オープンスペース)のことです。大規模公園、緑地、団地や大学などが指定されています。
(3)収容避難所
災害によって住居等を失い避難生活を余儀なくされた場合、継続して救助を必要とする住民に対して、宿泊や給食等の生活機能の提供など、一定期間の避難生活を送ることが可能な施設のことです。
各自治体が指定し、地域の学校の体育館などが指定されている場合が多いです。行政上は「避難所」と言っています。
しかし、収容避難所を「予備避難所」、広域避難場所と収容避難所をまとめて「指定避難所」と言ったり、災害時要援護者用の避難所(二次避難所あるいは福祉避難所)など細かく分類したり、全てをまとめて避難所と言ったりと、各自治体等によって名称や用途が多少異なる場合があります。
災害による被害を未然に防ぐため、日頃からこれらの避難場所とそこに至る安全な道順(避難路)などを確認しておくことが大切です。
次回は、「避難所の開設」について考えていきます。