危機管理業務部 主任研究員
 松並 栄治

 東日本大震災の発災以降、「防災の主流化」という言葉をよく耳にするようになってきました。
 「あらゆる事業に対して「防災・減災」というフィルターを通して総点検を実施し、必要な人・物・金等の資源を割り当てて「防災の主流化」を図ることにより、災害に強い国土、地域をつくる」ということですが、東日本大震災は、高い防波堤を作っても「想定外」の津波には歯が立たなかったというように、ハード面で必要なインフラ整備をするだけでは十分ではないということを教えてくれました。
 防災・減災のためには、ハード・ソフト両面からの対策を講じ、災害に対して強く(ハード)しなやかな(ソフト)社会を作ることが必要なのでしょう。

 例として、東日本大震災におけるライフラインの被害についてはどうだったのでしょうか。
 応急復旧のため、全国から応援隊が被災地に前進したものの、細部の経路が不明であり、被災自治体でも誘導員が不足したため現地支援が遅延した件などは、応援隊を差し出す側の人間がカーナビを装備させる着意があればスムーズにいったと思われます。
 停電により、自家発電で対応した施設が燃料の逼迫により施設・機材の機能が停止した件については、燃料備蓄の準備不足という人間の危機管理能力の低さが招いたものと思われます。
 市町村が災害対策本部を設置するも、停電により電気設備・機材が稼働せず、機能しなかった件や、市民からの電話対応により担当者の業務能力を超える状態となり、被害状況の調査、復旧活動が遅延した件なども、自家発電・燃料備蓄の準備不足、不測事態発生時に対応できる組織の構築をしていなかったという人間の危機管理能力の低さが招いたものと思われます。
 このようにライフライン一つをとってみても、人間の能力や意識の低さが原因と思われる事象が散見され、ソフト面の代表である「人間の意識・能力」についても「防災の主流化」を図ることが必要と考えられます。

 また、あらゆる事業に対して「防災の主流化」のフィルターをかけるということから、人間の成長過程である学校教育、社員教育、コミュニティ活動、生涯教育等においても「防災の主流化」のフィルターをかける必要があります。
 学校教育を例にとりますと、既に実施されているところもありますが、あらゆる学校教育の場面で「防災の主流化」を図り、社会人としての「防災意識・能力を高める」基盤を確立することが必要です。
 最後に、学校における防災教育の一例を記載します。
●防災教育をカリキュラムに取り入れ、災害が発生した際に個人で実行する初動対応を学ぶ。
●夏休みの宿題として、地域の防災史等の研究を取り入れる。
●普段通っている家から学校までの経路に潜む危険を探す。
●地域の災害史碑を見学したり、災害経験者から話を聞いたり、地域の防災探検を実施する。
●学校が避難所となった時の「避難所のあるべき姿」を考え、どんな準備が必要かを考える。
●学芸会において災害史劇を実施し、全学年に普及する。
●運動会の障害物競争に、瓦礫や倒壊家屋、液状化による漏水地点等、障害に災害の様相を取り入れる。
●学校に備蓄してある非常食が賞味期限となる前に試食会を開催する。

学校2