危機管理業務部 防災課長
岩崎 健次
災害対策基本法の目次体系は、組織、計画に次いで災害予防と災害応急対策、災害復旧さらに災害金融措置、災害緊急事態の章から構成されています。
特に、「災害予防」、「災害応急対策」、「災害復旧」は、防災の基本的3要素として防災基本計画、地域防災計画にも反映されている「防災への取り組みを決定づける」骨組みの対策でもあります。
< 「防災」に関する計画はたくさんあります(イメージ) >
ここで、予防と応急対策については、今一度そのやるべき事項を考えておくことが重要であり、今回のテーマとして取り上げたいと思います。
その中身の1番目は、予防と応急対策相互の関連性や互いへの期待の問題であり、2番目は、これらの限界と役割の問題です。
○予防と応急対策の関連性の問題
社会が成熟化される過程で、特に我が国のような災害国家では災害への関心は日々高まっており、如何に災害による災禍を極小化するかが政治の新たな課題にもなっています。
このため、予想される災害(想定)への対応として「人、物、金」を付ける予算化が最も分かりやすい方法の1つであり、これは「災害予防」の側面であると言えます。
確かに“泥縄”では災害対応はままならず、例えば、耐震化施設や地震に強い水道管(ジョイント部の弾力化)など、しっかりとしたインフラや警察・消防・自衛隊、防災組織などへの連絡網、緊急出動のための資器材の準備や災害対応組織・計画・マニュアルなど、国・自治体を中心とした各種整備は重要であり、緊急性を有するものが多いと思われます。
これに対し「災害応急対策」はこれらの活用の問題であり、組織・機材・システムを運用できる「組織・人」の能力の問題でもあります。
「予防」は、平素の時間の中で十分に準備されていきますが、応急対策は比較的短い時間の中で判断し、行動しなければなりません。しかも、複合災害など想定を超える事態への迅速な対応も期待されています。現場での活動は想像をはるかに超えるものであることは、我々が東日本大震災を通じて得られた教訓でもあります。そして、この「応急対策」の効果的実行こそが被害極小化の最後の砦になることも認識すべきです。
また、このような実行力を発揮できる能力の向上のためには、例えば、自治体防災関係者の長期勤務の人事や各種研修、首長も参加する防災訓練の企画など、「予防の施策」へも反映させることが重要になります。
このように、両者は相互にフィードバックしながら真剣に検討することが重要と考えます。
○限界と役割の問題
福島第一原発事故問題については、調査委員会の結論からその原因と対策が見えてきてはいますが、これをどのように原子力防災(施策)に反映するのか、未だ議論半ばであるように思われます。
その理由として、自然災害の有するエネルギーが時には人智をはるかに超えることや災害の経済・社会・住民への長期で多様な影響など、ハード・ソフトの施策を考えるのは今後の問題として残されていると考えます。
すなわち、原子力災害に限らず現在の災害対策には、災害予防のための予算を含めた「費用対効果」についての基本的な考え方が確立されていないことにあると考えます。どこまで我慢して、最小限どこまでやるかと言った指針がありません。
「予防」は、本来想定できるものへの対応が基本であって、想定の幅を限界として準備されるものです。
一方、応急対策は、予防対策をベースにしながらも限界を超えるものにも対応できる柔軟性を保持して対応する役割を有すると考えます。
本来、危機管理には、「心・技・体」の3要素が求められています。
防災関係者の「想像力と創造力」に期待する部分が多く、関係者の自学研鑽と広く地域の人たちからの強力なバックアップがあって、真の防災力の向上が図られることが期待されています。