危機管理業務部 主任研究員
松並 栄治
災害が発生した場合において迅速かつ的確な災害対策を行うことができるかどうかは、ひとえに、それを実際に行う防災担当職員の能力に依るところが大きいといえます。
その能力向上を図るためには、防災に関する教育訓練が必要であり、教育訓練を実施するための教育訓練施設を開設し、実践的な教育訓練を実施することが必要です。
米国においては、連邦緊急事態管理庁(FEMA)の関連組織である防災研修所(EMI)が、連邦レベルの中心的な防災教育機関として国立危機トレーニングセンター内に配置され、防災教育プログラムの開発・提供が行われています。
米国では、国土が広大なこともあり、日本の行政とは異なり地方分権の考え方が強く、防災教育においても基本的には連邦レベルでなく地方自治体レベルで実施されています。
日本における教育訓練施設の開設においては、米国を参考として、東京にある「有明の丘広域防災拠点施設」に、教育訓練の中枢となる日本版国立危機トレーニングセンター(仮称)を開設するとともに、地方自治体の教育訓練のため、地区トレーニングセンターを開設し、国及び地方自治体の防災担当職員の教育訓練を実施する体制を整えることが必要です。
その際、消防、警察、自衛隊の既存の教育訓練施設との連携・活用を図り、各機関が保有する教育訓練のノウハウを取り入れ、実践(実戦)的な教育訓練が実施できるようにすることが望ましいでしょう。
下の図は、陸上自衛隊の組織である指揮所訓練センター(災害対処指揮所訓練統裁支援システムを保有し、陸上自衛隊の部隊の災害対処図上訓練の実施を支援)と連携させ、国立危機トレーニングセンター及び地区トレーニングセンターを配置する一例です。
この際、災害対処図上訓練の実施においては、国立危機トレーニングセンターと各地区トレーニングセンターのシステムをネットで連接させ、地域間の協働訓練を可能にすれば、より実践(実戦)的な訓練が実施できるものと思われます。

≪陸上自衛隊の指揮所訓練センターと連接させたトレーニングセンターの配置(例)≫
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