危機管理業務部 主任研究員
 井坂 敏之

※「危機は、いつでも、どこにでも(その2)」のつづき。
 「その2」は、2013年9月17日付の記事を参照ください。



 私の回では、「日常生活において危機管理の視点を持つことの重要性」をテーマに考えてみたいと思います。
 今回は、某駅で倒れている女性に遭遇したケースをご紹介します。

 皆さんは、電車などに乗っていて急病人が出た場合の心構えは持っていますか?
 医師等、専門の方がたまたまその現場に居合わせた場合には、その方にお任せするのが一番だと思います。しかし、そういう方がいない場合(この場合がほとんどかと思われますが)、自分も含め、周囲の方々に緊急的な対応が求められることになります。

 私が某駅に到着し、車両から降りて改札口へ向かって歩いていると、隣の車両で人だかりができていました。そこには女性が倒れていたのですが、倒れた女性の周辺にいる10人以上の人たちが「大丈夫ですか?」とただ声をかけている、あるいは様子を見守っているだけで、誰も緊急連絡等の対応をしている様子は見受けられませんでした。
 そのため、私は、先ず駅員に連絡し、その後、携帯電話から119番通報をしました。実際、私は、女性が倒れた瞬間やその時の詳細な状況などは見ていなかったので、119番とのやり取りでは「●●駅の到着車両で女性が倒れているので、直ちに救急車をお願いします。」と頼みました。

 間もなく駅員が現場に来ましたが、(駅員も)どうしようというような状況でした。
 数分で救急車のサイレンが聞こえ、現場に到着しました。
 救急車が来た時点で、私にこれ以上できることはないと思いましたので、女性のことが心配ではありましたが、そのまま帰路につきました。
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< 救急搬送のイメージ写真 >

 私が119番通報するまで誰も電話をしていなかった訳ですが、仮に脳梗塞・心筋梗塞などの場合には1分・1秒を争うこと等を考慮すると、常に最善の方策を追及することが必要であると思います。
 誰でも「大したことはない」などと考えがちです。もしかすると、その女性も単なる貧血によるものだったのかもしれません。が、大きな病を持っていた可能性もあります。
 本人の様子をじっくり診る、あるいは周囲の状況等をよく確認するといったことなども時には大切ですが、先ずは迅速に、かつ常に最悪の事態を想定した対応が重要であると思います。

 次回も、日常において危機意識を持つことの重要性と、思わぬ誤解が生じる場合があるという別のケースを取り上げ、具体的に考えていきたいと思います。