危機管理業務部 主任研究員
 松並 栄治

 2014年3月25日に靖国神社の基準桜が開花し、東京の桜の開花が宣言されました。
桜
 満開の桜の下をゆっくり歩く、またはシートを敷いて酒を酌み交わす、この花見のシーズンはゆったりとした気持ちになれる気がします。
 「桜と防災」に関する面白い記述を見つけましたので、皆さんご承知のことでしょうが、紹介したいと思います。

 この時期、桜の木が川の土手に一連に植えられ、川の両岸で咲き誇っている風景をよく見かけます。私が住んでいる埼玉県の朝霞・新座地区では柳瀬川や黒目川という川の土手で、東京地区でも桜の名所で有名な目黒川や千鳥ヶ淵という川やお堀の土手で綺麗な花を咲かせています。
 なぜ桜は全国どこでも川の土手に数多く植えられているのだろうかと考えた場合、山の土砂崩れを防止するために植林するのと同様、川の土手が崩れるのを防止するために木を植えた、その木が「たまたま」春に綺麗な花を咲かせる桜の木だったと思っていました。しかし、「たまたま」ではなく、重要な狙いがあって桜を植えたということを知り、感心した次第です。
 冬の川の土手は、霜や氷によって傷んでしまいます。そして、春が過ぎ、梅雨の頃には、傷んだ川の土手を増水した川の水が直撃し、土手を決壊させることになります。これを防ぐのに考えられたのが、「土手の花見」だということです。
 梅雨の時期に入る前に土手をしっかりと固めることが必要ですが、桜の花見に沢山の人が集まり、土手に陣取り酒を酌み交わす、ゆっくり歩くということが、冬場に痛んだ土手を知らないうちにしっかりと固めていき、土手が梅雨の増水に耐えられるようにするということです。つまり、花見客は、単に花見を楽しんでいるだけなのに、実は、土手の決壊防止に貢献しているということなのです。更に、多くの人々が集まれば、危険な個所や補修を必要とする箇所を発見する機会が増えることも計算に入れられているということです。
 この話は、「防災」という固い話と「花見」という柔らかい話、「土手や桜の木」というハードと「花見(イベント)」というソフトを兼ね備えている話と言えます。
 東日本大震災後の対策として言われている、津波対策のための堤防や津波避難タワー、津波避難ビルの作成(ハード)と避難訓練の実施(ソフト)という両面を考えることが必要だということに通ずると思われます。
 また、防災対策というものは、一過性のものではなく、花見客が毎年毎年、土手を固めているといった「何世代にもわたって反復される」、継続的な備えが必要であるということを教えてくれているということです。