危機管理業務部 主任研究員
山之内 裕
【 前々言 】
先日、腫瘍が見つかった腎臓の手術を受けるために2週間ほど都内の病院に入院しました。手術は4時間程度で終わりましたので、それほど大手術というものではなかったと思います。
手術翌日の午前に術後のレントゲン撮影ということで、激痛が走る中、車椅子に乗せられ、12階の病室から5階の撮影室まで往復しました。病室に戻った時には、痛みのために出る脂汗で体中がビショビショだったことを覚えています。
その日の午後には、可愛い看護師さんに「歩行訓練をしましょう」と優しい声で命令(?)され、腕に点滴の管、尿管や脇腹からのドレイン、背中に痛み止めの管をぶら下げたまま、激痛を我慢しつつ病室前の廊下を15mほど往復しました(というより「歩かされました」)。
やっとの思いで病室に帰り、顔面の脂汗を拭いながら、私に激痛を与えてくれた可愛くて優しい声の看護師さんに聞いてみました。「僕の今の状態は、避難する場合、担送ですか、護送ですか」と…。車椅子で押して貰いながらも脂汗を目いっぱいかいた私としては、「担送」という返事を期待していましたが、看護師さんはニコッと笑って、「歩けるから、軽症で独歩ですよ」という期待外れの恐ろしい返事が返って来ました(-_-#)。
その後2日間は、「避難する状況にはなりませんように!」と本気で祈っていました…。と同時に、「点滴などの管が体に付いている状態でも、点滴装置を押しながら出来るだけ健常者と同じような速さで歩けるようにならなければ」という思いも沸々と湧いてきました。入院中は特にやることもないので、歩行訓練に精を出すきっかけにもなりました。
私が携わってきた国民保護の図上訓練において、病院や福祉施設等に入院・入所中の災害時要配慮者(以前は「災害時要援護者」と言っていましたが…)の避難を検討する時、軽症患者等は自力歩行が可能ということで、ケアーを軽く考えていました。
今回の入院経験で「軽症者にも多種多様な症状・状態の人がいるため、健常者と同じ歩行速度で避難できるとか、十把一絡げ的に大型バスで移動するという手段は必ずしも適切ではない」ということを、身を以て知らされました。点滴をいくつも付けたまま歩けば歩行速度は限られるし、バスに乗れば1人分以上のスペースが必要となります。災害時要配慮者の避難を考える場合は、本当にきめ細かな配慮が必要と感じています。
しかし、世(国や中央…)の風潮は、市町村を対象に「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」なるものが示されているようですが、多くの要配慮者を抱える病院や福祉施設については、ほとんど考えられていません。嘆くべき実態です。
最近、テレビの天気予報では「東京スカイツリーからの映像」を見ない日はありません。入院中の病室からスカイツリーを見ることができたため、その映像を見るたびに前述の思いが呼び覚まされます。この思いから、病院の避難について考えてみたく、本ブログのテーマとしてみました。
今後、数回にわたり思いつくままを掲載していきますが、なにぶん素人ですので、お読みになられた方々からのご意見、ご指導をいただいて、私なりに本テーマの整理が出来ていければ…、と思っております。
なお、当初5〜6回位は、「病室から見たスカイツリー」のデジカメ画像を掲載したいと思っています(5〜6回位しか画像がないのです…)。
初回の画像は、これ(日中・曇り空ですが)です。(右の建物を避けると、スカイツリーは中心から外れます。ご容赦のほど・・・)