危機管理業務部 研究員
陣内 紀匡
平成26年は自然災害などが比較的多い年で、被害も甚大であったと思います。冬の豪雪、夏の土砂災害、火山の突然の噴火、11月22日の長野県北部での震度6弱の地震など、いつ、どのような場所でも災害及び危険はやって来るものであり、災害等に対する備えや危機管理等についても常日頃から考えておく必要があると感じているところです。
今回は「身近な危機管理」というタイトルで、私自身が最近感じたところを記載させていただきます。
危機管理の一般的定義は、「国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生じ、又は生じるおそれがある緊急の事態への対処及び当該事態の発生の防止」ということで、危機管理に携わる人はよくご存知だと思います。
東京などの首都圏等にお住まいの殆どの方が、普段の通勤時に電車を利用されているものと思いますが、電車の中には、万が一の危機管理に備えて様々な取り組みが施されていることはご存知でしょうか?
その1つとして、電車内には必ず車両毎に消火器が設置されています。また、設置場所が判るように指示表示もされています。通勤ラッシュ時の満員電車の中では関心も薄く、また、電車内を見渡す余裕もないかとは思いますが、一度どのようなものがあるかを確認し、火災等の不測事態に対応できるようにしておくことも大事だと思います。
< 地下鉄車内の消火器の位置 >
先日、日本の地下鉄及び都内路線バスの運行管理、安全管理の状況等を外国人研修者が視察する内容のテレビ番組を見ました。
それぞれの分野で、車両運転手の教育・指導、危機管理に備えた運行要領、分刻みの運行管理、車両(電車・バス)、地下鉄線路内の点検要領等、乗客の安全を第一義とし、徹底した運行管理、安全管理を実施している現場の状況等を視察した外国人研修者は、一同に驚きと日本の技術力や管理能力の高さに感銘を受けていたのは印象的でした。
特に、電車の車体下部の点検において、昔ながらの点検ハンマーを用いてボルトの緩みを一つ一つ点検している整備員の検査について、「まだそんな原始的なことをやっているのか」と驚いているようでしたが、私は、殆どねじの緩み等は発生しないにも拘わらず、万が一のために、自身と誇りを持ってやるべき事をきちんとやっている日本の整備員の姿はとても素晴らしいと共感した次第です。
また、茨城県日立市と業界最大手の「日の出水道機器」が、全国初となる避難誘導の機能を持った歩道用の「避難誘導マンホール」を共同で製作したという記事が新聞に掲載されていました。
製作されたマンホールは、避難場所へスムーズに行けるよう、避難場所の方角と距離が一目で判るものであり、市民への防災啓発が期待できることから、市の担当課は、出来るだけ早期の実用化と設置を希望しているとのことでした。
日立市がこの取り組みを始めた背景としては、市では東日本震災時に最大5.3mの津波を記録し、また、96箇所の避難場所について場所等を示す案内板を設置しているにも拘わらず、位置を知らない市民が多かったことから、市職員が市内に3万個以上あるマンホールの活用を発案したことがきっかけだったとのことです。
今回、様々な人が災害等への準備及び危機管理について知恵を出し合い、地域住民やお客様等の安全・安心の確保のために日夜努力をされている姿に触れ、時間や場所を選ばず突然やって来る危機に、また、身近に、しかも確実に忍び寄る危機にどのように対処していくのか、私も防災・危機管理を専門とする弊社に入社した以上は、そのスペシャリストとなるべく日々精進努力していかなければと思いを新たにしたところです。