危機管理業務部 研究員
 清水 信雄

 皆様、はじめまして。平成27年の年明けと同時に入社致しました研究員の清水信雄と申します。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
 私は、これまで諸先輩方から、仕事を行う上での「基本・基礎」とも言うべき多くの事を、様々な場面やちょっとした出来事を通じて教えて(伝授して)いただきました。
 1つ1つの内容は、とても小さな事かもしれませんが、仕事を行う上での基盤(バックボーン)として納得できることばかりであり、諸先輩方に感謝の気持ちで一杯です。
 今回からその内容を「先輩の教え」と題して、本ブログでご紹介させていただこうと思います。
 きっと、日頃から防災・危機管理業務に励まれている方々や、「図上訓練」等に参加し様々な経験を積まれる方々には、何かの参考になるものと思っております。ちょっとの時間ですが、是非ともお付き合いいただければ幸いです。

 「新年明けまして、おめでとうございます〜!」
 今年のお正月休み、新年に相応しいお笑い芸人の元気一杯の挨拶や、アイドルの艶やかな振袖姿がテレビの中を華やかに演出する中、私は、朝から「お正月、お正月!」と自分の行為を正当化しつつお酒をチビチビやりながら、数本の鉛筆を手元に置き、元旦から届いた年賀状を整理したり、新調した手帳を整理していました。
 近くの文具店で最近購入した手回しの鉛筆削り機で鉛筆を削っている時、大晦日に夜更かしした娘たちが目を擦りながら起きてきました。


「おはよう。(間違えちゃった…) おめでとう〜!
 …お父さん、シャーペン持って無いの…?」


「おめでとう。
 お父さんは、鉛筆が好きなの!(笑)」


 娘たちとのちょっとした会話を通じて、その昔、某先輩から伝授されたある技の事をふと思い出しました。

 今から約30年前、私がまだ自衛隊の若手隊員だった頃、「図上訓練」を行うために、先輩が作った訓練会場配置図に基づき、様々な準備を行っていました。
 机・椅子・ホワイトボードを並べ、ワープロ・プリンターを配置し、壁には何枚も地図や掲示物を張り、参加者の机の上には各種資料の他にメモ用紙・消しゴム・付箋紙、そして数本の鉛筆を並べました。準備した鉛筆の色は「黒」「赤」「青」の3種類。当然のことながら、電動の鉛筆削りを使って先を尖らせ、準備は完了です。
 しばらくすると、先輩が準備の様子を見に来ました。


「先輩! だいたい準備が出来ました。(心の中では「完璧!」)」

先輩
「大変だったね。ご苦労様!

 (準備の様子を一通り眺めた後・・・)
 そうか…。今日はちょうど良い機会だから、お前に技を1つ伝授しておくよ。」

「何を伝授していただけるのですか?」

先輩
「鉛筆の削り方についてだよ!」


「…鉛筆の削り方ですか…???」


 普段、皆様はどうのように鉛筆を削っていますか?「鉛筆で手書き? 時代遅れか!PCかスマホ入力に決まってるだろう!」「手書きするにしたって、シャーペンかボールペンだよ! 鉛筆なんてもう使わんね!」かもしれませんね(もう少々、この話にお付き合い下さい)。

先輩
「いいか…、特に色鉛筆を削る時は、鉛筆削りを使うのではなく、小刀やカッターを使って削るんだよ。
 ほら、こうして…!決して、先を尖らせず…だいたいで良いんだ。」

 (先輩は、写真のように削り始めました。)
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「はぁ…(?)」

先輩
「先を尖らせてあれば、見た目が気持ち良いだろう。しかし、書く時にちょっと力を入れれば、先っぽが簡単に折れちまう。よく使う鉛筆だからこそ、だいたい角ばって削っておけば良い。
 1本の鉛筆でも、使う人の持ち方や使い方次第で、細くも太くも書け、また、折れにくいんだ!たかが鉛筆1本の削り方かもしれないが、ひょっとすると、日頃の仕事の進め方や心の持ち方も同じじゃないのかな。いざ、必要な時に使い勝手が良く、決して折れない!今日は、この事をお前に伝授しておく。
 まぁ、よ〜く考えてみろよ。だけど、準備自体はなかなか大したもんだ。ご苦労様!」


「はぁ…(?)」


 今や自然災害は「忘れた頃にやってくる」から「近い将来必ずやってくる」との認識が常識となってきており、また、最近の自然災害を見ると、常に不意に、そして予測を超えて起こるものであることを皆様も感じておられると思います。
 あらゆる自然災害に備えるにあたり、様々な対処計画を作成し、創意工夫して万全の諸準備をしておくことの重要性はもちろんですが、災害発生当初の混乱や不眠不休での諸活動、時間を必要とする復旧・復興をイメージした時、日頃からの物の準備や、普段からの、そして緊急時の仕事の進め方や心の持ち方など、今回お話した先輩の教えは、あらゆる場面や事柄に応用できる大変重要な事だと思いませんか?
 また、小刀やカッターを使って鉛筆を削るには、少々の技と、日頃からの練習(絶え間ない訓練)が必要となります。不測の事態に備え、自学研鑽に励むとともに、図上訓練等を積極的に行い、練度向上に努めておくことがとても大切です!

【 今回の「先輩の教え」 】
 例え1本の鉛筆でも、削り方次第で折れづらい! また、その持ち方や使い方を少し変えるだけで、細くも太くも書ける「優れ物」に変身する。

 某先輩から伝授されて早30年…。あまり進歩向上の無い私ですが、この教えを今一度思い出し、微力ながら、自治体等、組織と地域の防災・危機管理に係る体制の整備・向上に少しでもお役に立てるよう精進していく所存です。
 次回も、宜しくお願い致します。
(追伸:この記事を読まれ、小刀やカッターを使って鉛筆削りにチャレンジしてみようと思われた方は、くれぐれも指や手を傷つけないよう十分注意して下さいね。)