危機管理業務部 危機管理一課長
 松並 栄治

 海では何色が一番目立つか、何色の服を着ていれば発見され易いか、ということを考えたことがあります。海におけるエマージェンシーカラーは、海難事故で遭難者を捜す際に、海の青色の補色であるオレンジが一番発見されやすいことから、オレンジ色になったようです。
 皆さんは、このオレンジ色を使った「オレンジフラッグ」というものをご存知でしょうか。今回は、この「オレンジフラッグ」についてご紹介したいと思います。
オレンジフラッグ
【 津波防災訓練時に掲揚されたオレンジフラッグ 】

 オレンジフラッグとは、津波注意報・警報発令時に波の音や風の影響に左右されない視覚的な避難合図として、全国各地で認知を広める活動が行われている新しい津波情報の伝達手段です。
 神奈川県の海岸では、津波警報等の災害警報や台風、落雷などの注意報の発令時にオレンジフラッグを掲揚して、海岸にいる人々へ避難を促す取組みを推進しています。
 従来、津波警報等の発令時には、各市町村でも防災無線等で対応はしていますが、海岸付近は波の音や風の影響により聞こえづらい状態であり、サイレンとスピーカーを装備した巡回監視車両を用いて防災情報の伝達を行っています。
 東日本大震災発生時においては、「波や風にかき消され、沖合にいるウインドサーファーたちに津波警報は全く届いていなかったため、レース用の旗を海に向かって懸命に振ることで、何とか知らせることができた。」ということであり、従来の聴覚にうったえる警報と重複して、視覚にうったえる警報の必要性が出てきたのです。
 そこで、津波警報等が発令された場合に、海で一番目立つ色の旗を海岸に掲揚し、サーファー等の海にいる人々に視覚で避難を呼びかける「オレンジフラッグ」という取組が神奈川県の海岸で進められるようになりました。
 ちなみに、今では、全国各地でオレンジフラッグを広める活動が行われているようですが、数年前に弊社で担当した某市の津波避難訓練で、このオレンジフラッグの話を持ち出しましたが、その時はまだ認知されていない状況でした。

 海岸にいる人々に、「海岸にオレンジフラッグが掲揚された場合は、ただちに海岸から高台に避難する。」ということを知ってもらい、ルール化する必要がありますが、マリンスポーツ愛好者はその海岸の近くに限らず、市外や県外等からも多数訪れることから、その海岸だけのローカルルールとしてではなく、全国的なルールにしていく必要があろうかと思います。
 また、オレンジフラッグが導入されていない海岸も多数あり、津波警報等発令時に全ての海岸でオレンジフラッグが掲揚されるわけではありません。加えて、導入されている海岸においても、掲揚は人的な作業であることから、掲揚ができない(いつも掲揚できるわけではない)といったことも当然起こり得ます。
 こういった状況を認識したうえで、いざという時に自分の身を守ることができるよう、マリンスポーツを楽しむ際でも、「常に五感は働かせておく」という危機管理的姿勢も必要でしょう。