危機管理業務部 研究員
 安藤 正一

 今年の5月中旬に「津波はまた来る」というドキュメンタリー番組が放映されていました。この番組によると、約21,000人の犠牲者を出した1896年の明治三陸津波以降、我が国では100名以上の死者・行方不明者を出した津波が平均14年に1回発生しているとのことでした。
 また、過去数十年間で徐々に地球の温暖化が進んでおり、その影響もあり、近年、日本各地で、短時間で狭い地域に「猛烈な雨」が降り続いて、土砂崩れや河川洪水が発生し、多くの犠牲者が出ています。
 つまり、我が国周辺では、ある程度の一定の間隔で大地震を伴う大津波が発生しており、また、地球温暖化の影響等から、昔は熱帯地方の代名詞であったスコールのような「猛烈な雨」が頻繁に発生するようになっており、私たち日本人は、災害が多発する中で生活している状況にあると言えます。
安藤_No.01_女川町浸水状況
【 東日本大震災時の宮城県女川町の津波被害状況 】

 しかしながら、私たち日本人の災害に対する意識や備えはどうでしょうか?
 様々な防災に関する調査結果によると、家具の転倒防止などをせず、また、非常用の飲料水や食料を備蓄していない人たちも、未だに多く存在しているようです。
 その背景には、日本各地で毎年のように何らかの自然災害が発生していても、自分が居住している地域が被害を受けていなければ、心のどこかで、自分の居住している地域は自然災害に見舞われる可能性が低いという、漠然とした根拠のない安心感があって、結局、防災への備えがなおざりになっているのではないかと思われます。

 防災・危機管理を専門としている越野岩手大学客員教授は、「どこかで起きたことは自分の身近で起きることを覚悟して対処を考えるべきである。」と警鐘を鳴らしています。
 災害大国日本で生活している私達は、いずれは自分や家族も大きな災害に見舞われることを覚悟して、自宅の耐震化や家具の転倒防止、そして、非常用の飲料水や食料の備蓄一時避難場所や宿泊可能避難所の位置の確認、また、災害時の家族同士で安否確認方法等をしっかりと行なっておくことが、万が一、自然災害に見舞われたときに自分や家族が生き延びることに繋がるのではないでしょうか。
 さらに、大地震、土砂崩れ、洪水などで自宅での生活ができなくなった場合において避難所生活を想定し、自治体が準備している避難所運営訓練マニュアル等に基づいて、定期的に避難所運営訓練を実施しておくことも、町会・自治会の平素における大変重要な備えであると思います。