危機管理業務部 主任研究員
 坂上 栄一


 私は、昨年度、ある自治体の避難所運営訓練支援を担当しました。一年を通し避難所という言葉に感心が深まり、あらためて『避難所』について考えてみることにしました。困った時は、『歴史に学べ、きっとその謎は解けるはず』と言われたことがありました。特に謎はありませんが、謎が生まれてくるかもしれません。今回は、江戸時代にタイムスリップして当時の避難所を読み解くことにしました。また、途中で今まで経験した避難所訓練支援時に気付いた点について触れてみました。

★それでは今から165年前にタイムスリップ→→→
  江戸時代「安政2年10月2日(1855年11月11日21時20分頃)」
 江戸直下地震が発生しました。震源地は荒川河口とも柏・我孫子付近ともいわれおり、直下型地震で、M7.0〜7.1でした。
 /姪截彊幣紂東京都内→千代田区丸の内、墨田区(本所)、江東区(深川)
 ⊃姪截帰中央区日本橋・銀座、千代田区霞が関・永田町
 E櫺家屋1万4346軒(特に深川で大きな被害)、死者約1万人と推定されています。
 発生から半日後には、約600種類のかわら版が出回り
  崔録未収まりました」
 ◆屬救い小屋はここにあります」
 といった情報が庶民に伝わりました。すると今度は人から人へと伝えられ、長屋に住む人も隣近所に声をかけながら、かなりのスピードで伝わったようです。
03_安政大地震瓦版

安政2年大地震の瓦版

 「共助」が自然と行われる環境ではあったかもしれません。「お救い小屋」は幕府が設置したもので、今でいう避難所のことです。地震発生3日後から幸橋門外、深川河辺新田、深川永代寺内、浅草雷門前、上野山下など5箇所に設置されました。
 ●共助について
 現代、情報収集手段は多岐に、情報はリアルタイムに飛び込んできます。
 しかし、災害時に声掛けを必要としている人は、いつの時代も高齢者・要配慮者等弱い人達です。声掛けが間違いなく伝達できる最終手段です。その周囲に住む人達の助けが必要です。声を掛け、共に難から逃れてください。日頃からの声掛けが大事です。「日々のひと声、声掛け、わが身を救う!」
 ➡この「お救い小屋」は、千坪位の広さに仮小屋として半日余りで建ててしまうというかなりのスピード感があったようです。
 ●避難所開設は早く、知っておくべき最小限のことは(訓練支援を振返り)
 現代の避難所開設についてもこのスピード感は大事です。避難者に早く安心感を与えてあげることです。そのためには、訓練の繰り返し・積み重ねが大事です。また、1年毎の訓練時、「また同じ訓練だ!」と言いながら継続して参加する人、本当に頼れる人です。悩まず、すばやい対応をとってくれるのです。
 避難所を早く開設するには、最低限知っておくべきことは
 ,泙左阿魍けなくては、鍵の開け方、知っていますか?
 △修虜櫃離札ュリティー解除は、どうしたらできますか?
 次に避難所内のどこの施設を開放したらいいのですか?
 こ放施設の明かりスイッチは、空調機のスイッチは、どこですか?
 1年間、避難所運営訓練支援を通じ、住民の方々から得た最小限の知っておくべきことです。
 ➡南町奉行所(現在の有楽町駅前)がこの災害に対し、早々に評議し9項目の対策を決定し迅速に実行に移していきました。この迅速な対応ができたのは、奉行所が大きな被害を受けなかったことも幸いしました。
 『躡厂韻慂化个薫り飯を配布する。
 ⊇匹覆靴砲覆辰深圓領ち退き先として御救小屋を建てる。
 けが人の救療・手当をする。
 て用品の確保を諸問屋に命ずる。
 ス顱垢茲蟒職人を呼び集めるよう職人仲間惣代に命ずる。
 η笋蠕砲靴漾買い占めを禁ずる。
 Ы物価・職人手間の騰貴を禁ずる。
 与力・同心をして町中見廻・救助・取締まりをさせる。
 町名主中に震災対策の掛りを申し付くる。
 救済の「三仕法」(救済を行う3つの方法)として、「お救い小屋」、「野宿者への炊き出し、握り飯の配布」、「お救い米」を定めていました。
 現在の新型コロナウィルス感染症対策を見るに現代版9項目の対策に置き換えてみると共感するところが多々あると思います。
 ●ふと、ここで、2年前の津波避難訓練を思い出す
 津波避難訓練の一環として避難所開設運営訓練を実施するにあたり、どこの地区が担当するかと議論になりました。当然、避難をする地区の人が実施すると思っていましたが、一部の住民(山側の避難しなくてもよい住民)から「避難者は命からがら津波から逃れてくるのだから、開設・運営は山側の地区ですべし!」との意見がでてきました。まさにその通りだと思いました。心温まる一場面を見ることができました。

 ★まとめ
 避難所の運営は、「救いの精神」で難に遭遇しなかった地域の人達で、第1歩から始めたらどうでしょうか。まさしく、「共助」の精神そのものでしょう。
 避難所という名前と「お救い所」という名前、どう感じましたか?
 ●「避難所」に避難せよ、難を避けるために、迷わず、早く。
 ●「お救い所」に避難せよ、救ってくれる人・物が待っている。 
 「お救い所」なんと響きのよい心温まる言葉でしょう。避難所は、避難場所とは異なり、少なからず生活をしなくてはならない場所です。避難所を開設・運営する自主防災組織等の皆様の温かい心が避難者の心を癒してくれることと思います。

※参考文献等
 1「災害史に学ぶ」中央防災会議「災害教訓の継承に関する専門調査会」編
 2「江戸の災害史」倉地克直著