危機管理業務部 主任研究員
 三宅 丈也


 近頃、巷では横文字があふれ英語の苦手な者としては大変住みづらくなってきました。例えば、テレビなどでよく耳にする「DIY」とは何でしょうか。イメージとしては日曜大工?と思いがちですが、「Do It Yourself」の略で「素人が自分で何かを作ったり修繕とかをしたりすること」「自身でやる」などを意味してほぼ日曜大工と同義ですが、最近ではそれだけを言う訳でもなさそうです。個人的には横文字はつい敬遠してしまいがちですが、「自分で○○を作る」というフレーズは大いに共感できます。

 私事で恐縮ですが、小中学生の頃、ある地方の山麓にあったTVで人気の「ポツンと一軒家」に住んでいたのですが、家の真上にあった溜池が大雨のため夜中に決壊し山崩れを引き起こして自宅の大半が流されるという経験をしたことがありました。私や家族全員が居た部屋と渡り廊下一つ隔てただけの直ぐ隣の建物や鶏舎などは全て土砂で流されてしまいましたが、九死に一生を得ることができました。翌日その惨状を見て、こちらの部屋にもしも居たら・・・と思い、自然の猛威に震え上がりました。その経験から、自分で今のマンションを購入するにあたっては、自然丘陵地の高台を選定いたしました。
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今は近代的な大住宅街に変貌した山がある日突然に牙を剥いた・・・
(昭和42年頃の山崩れ後の自宅状況)

 現在は、ハザードマップを使って自宅を選んだり建てたりする人も増えてきた様です。確かに自宅選定や建設のための大きなファクターとしてハザードマップを活用するというのは良いことだと思います。しかしながら、ある意味「リスク(危険度)マップ」から「安心度マップ」になってしまうという懸念も残ります(『・・・従前の想定によるものがかえって安心材料となり今回の津波において被害を拡大させた可能性も否定できないという課題が明らか・・・』東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告《平成23年9月28日》中央防災会議)。つまり、お住まいとして検討中(建設予定)の地域がハザードマップでは被害想定等の表示が全くなく「安全、安心」だ、と思い込んでしまうのでは、ということです。
 例えば「先人の教え」シリーズ◆蔽鰐省圈砲任盻劼戮泙靴燭、平成26年8月に広島市安佐地域で起きた大規模な土砂災害の中で被害が大きかった八木地区は、崖崩れ等の警戒区域の指定外とされハザードマップにも危険性が記載されていませんでした。安全、安心と思い込んでいた地域で大きな災害が起きたのです。しかしながら、この地域は古い地名は「蛇落地悪谷(じゃらくじあしだに)」と呼ばれ、時を経るにつれ「八木上楽地芦屋」、さらに現在の「八木」へと変わったと言われています。先人は私たち子孫に「地名」で警告を発していたのであり、ハザードマップだけではなく先人の教えに謙虚に耳を傾けることも大切です。

 そもそもハザードマップとは何でしょう。一般的には「自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図」とされ、別名としては防災マップ、被害予測図、被害想定図あるいはリスクマップなどとも呼ばれ、主に行政が作成しています。
 国土交通省ハザードマップポータルサイトを見ますと、洪水や土砂災害、津波、道路防災情報など自然災害に応じた被災想定区域などが直ぐに表示され確認することができます。
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 この「重ねるハザードマップ」を活用すれば、皆さんが心配だと思っている要素(被災想定情報など)を複数選択して重ねて表示することができます。例えば、「自然地形」を選べばもともとの自然丘陵地を表示することができますし、昔は低湿地だったかどうかについては同様に「明治期低湿地」を選択すれば表示されます。こうして、ビジュアルで非常に見易く、分かり易く、使い易いものが出来ます。その上、これらを更に重ねていくこともできます。これらを活用して、お住いの近くやお住まいとして検討中(建設予定)の地域についてのハザードマップをDIY(自分で作成)してみてはいかがでしょうか。
 ですが、いきなり「重ねるハザードマップ」を使用して全ての要素を選択して表示しても、ただ黒くなって逆に何が何やら分からくなってしまう場合も考えられます。DIYとは「自分で○○を作る」「自身でやる」であり、物事に頼り切ってはならないと思います。まずは、ご自身で現地周辺を歩きながら現場を見て、どんな災害が予想されるのだろうかと自分なりに考える事が重要です。つまり予測される災害を概観することです。具体的には、その地域は崖崩れが起きそうな地域なのか、洪水は考えられるのか、液状化は?・・・など、一つ一つ地形等を大観しつつ実際に目で見ていけば色々と分かってくることがあります。そして、どのように予想しても崖崩れなど考えられない地域だとか、津波ならば海からの距離や途中に壁になったり弱めたりする凹凸地形がある上、地域事態の標高が高いなどからあまり心配はない、など想定する災害要素を排除して予測される要素に絞っていけば見易く、真に役立つマップを作ることが出来ます
 とはいえ素人だし、初めての場所であり分からない、専門家が各種データを駆使して作ったハザードマップを使えばそれでいいではないか、と思われるかもしれません。確かにその通りですが、古くからある地名や言い伝え、昔の忘れ去られた災害の記憶などの全てをハザードマップが含んで反映しているとまではいえません。
 こういった事はご自身が足を使って、古老の話を聴いたり、古い神社仏閣の由緒書きや石碑を尋ねたり、あるいは図書館等で郷土史を紐解いたりすれば、大きなヒントが得られるかもしれません。先述した広島市の山崩れの例をみるまでもなく、作られたハザードマップに頼り切るのではなく、古い地名を調べてみたりしてはいかがでしょうか。そして、その上で先ほどの要領で自分なりのハザードマップに仕立て挙げてみるのも良いかもしれません。
 そして、「DIYしたハザードマップ」に自宅や近くの高台などの標高避難場所と避難経路を複数書き込んでおくと更に良いでしょう。また、避難時携行品の準備や定位置、そして家族離散時の連絡方法や集合場所等の話し合いなどを日頃からしておけばDIYしたハザードマップと相まって、いざ災害時の「安心」「安全」度が飛躍的にアップすることでしょう。
 日曜大工はちょっと苦手という方、一度チャレンジしてみてはどうでしょうか。