危機管理業務部 主任研究員
 三宅 丈也


 「先人の教え」シリーズは、これまで、前段において\佝蝓↓地名、治水・治国、いわら版、ジ鼎た声劼両貊蝓↓κ幻ァ↓復旧・復興について、後段の番外編に入ってからは番外 ̄嫋化現象、番外感染症、番外B膕弌,鮓て参りました。
 後段の番外編では主に災害の事象を、そして前段において先人が自分たちや更なる先人たちが経験してきた災害の活きた教訓等をどのような手段(ツール)で我々子孫に遺してくれたのかを主に見てきました。今回は、前段において抜けていた「言い伝え」についてスポットを当ててみたいと思います。
 日本全国には災害に対する「言い伝え」が数多く残されています。これらをよく纏めたものとして総務省消防庁がHPに公開している「全国災害伝承記録」がありますので引用し紹介します。
 “有史以来、全国で発生した災害は各地に多大な被害をもたらし、それらの災害の教訓は各地域において記録としてあるもの、図画として残されているもの、あるいは物語、ことわざとして伝承されているものなどがあります。
 そのような災害にまつわる資料や情報は、これまで国として整理されず今日にいたっており、その多くが各地域に埋もれたままとなっています。
 全国災害伝承情報は、そうした各地域に残る貴重な資料を、国として整理集約し、インターネットを活用し広く一般に公開することを目的としたもので、平成16年度から平成18年度にかけて都道府県や市町村などの協力をいただき、調査を通じて収集した情報を整理集約しました。
 この情報を通じて、身近な地域に残されている災害に対する教訓を個々人に認識していただき、防災意識高揚に役立てていただくとともに、防災教育用の教材としての活用が図られることを期待しています。" 全国災害伝承情報:総務省消防庁
 全国各地に共通的に数多く残っている「言い伝え」としては、「地震が来たら、竹やぶに逃げろ」というものがあります。これは竹やぶには倒れる様な建物も無く、根が張っていて地盤が比較的安定しているためと考えられます。同様に「高台に逃げろ」「便所に逃げろ」というものがあり、それぞれ地震後の津波への警告と地震時に屋内に居た場合は柱が密な部屋に難を避けよ、という教訓と思われます。
 「裏山が音をたてたら気をつけろ」という類のものもあります。がけ等が崩れる前兆として大音がするというものです。以前、当ブログ「ハザードマップをDIYしよう」でも紹介しましたが、私自身が小さな頃に実際に遭遇し九死に一生を得た土砂崩れの際も、のちに母が「ドーン」という音がした、と言っていたことを思い出します。
 また、生き物に関する「言い伝え」も多く「鳥、蜂や蜘蛛が高い処に巣を作ると大雨、低い処に作ると大風が来る」というものや、「家からネズミがいなくなれば火事が起きる」というものも意外と多く、人間にはない生物が持つ鋭い感覚・能力による災害予兆のメッセージとも考えられます。
 他にも、農林水産省農村振興局が平成17年〜19年に実施した地すべりに関する全国の聞き取り調査(地すべり地の言い伝えを活用した災害対策の検討)によりますと、危険な場所・安全な場所として「神社は昔から位置が変わらず、その周辺に家を建てると良い。人家周辺は特に被害はなく、山や田で崩れているようだ。」という話が残っています。
 以前、先人の教えァ惴鼎た声劼建っている場所』においても紹介・考察をいたしましたが、一般的に地域の高い場所には古い神社が残されていることが多く、これは過去に津波被害などの自然災害をほとんど受けていない為であり、住むには安全な地域として先人が私たち子孫に残してくれた長い歴史の中での教訓の一つと云えます。
 この様に言葉などで語り伝えられてきた「言い伝え」は、まさに先人が我々子孫に遺してくれた活きた教えと云えます。中には、明らかに疑問符が付くものや、科学的根拠はどうなのか?という様なものもありますが、良く考えてみるとなるほどという合理的なものも数多くあります。我々は、一口で迷信などと言って目を背けるのではなく、何故そういう言い伝えが遺されたのか、どういう背景があったのかなどを検討、咀嚼して、先人たちが折角遺してくれた教え「言い伝え」を更に私たちの子供たちへも伝承していくことが求められているのではないでしょうか。
 私たちの身近な地域にも「言い伝え」は残されていると思います。ご自身で足を運び、地域の郷土史家や古老のお話を伺ったり、身近な古い神社仏閣に詣でて由緒や石碑を訪ねたり、あるいは地域の図書館等で郷土史を紐解いてみますと、地域の防災に関する「言い伝え」が意外と多く遺されているかもしれません。
語り継ぐ

〜 語り継ぐ 〜

 最後に、内閣府の防災情報のページから、国土地理院が進めている自然災害伝承碑について紹介した一節を引用して終えます。
 “平成30年7月に起こった西日本の豪雨災害の際、多くの犠牲者を出した広島県坂町にある「自然災害伝承碑」は、111年前に起きた大水害の被害を後世に伝えるために建立されました。坂町では今回の災害時に避難勧告が出されましたが、この石碑のある地区の避難率は町全体の半分にとどまりました。
 石碑が建立された111年前の当時は、水害に対する備えや適切な避難行動等、住民の方の防災意識が非常に高かったと考えられます。しかし、時代の経過とともに人々の記憶は薄れ、世代を越えての記憶の継承が難しいことは、実際の避難行動からうかがい知ることができます。”
 引用:内閣府 防災情報のページ「自然災害伝承碑の地図化で災害教訓を普及(国土地理院)」