危機管理業務部 主任研究員
 松並 栄治

1 はじめに
 令和3年度に宇宙システムに係る業務に携わり、災害対応に人工衛星がどのように係わっているかということが知りたくなり、災害発生予測や情報収集・共有への人工衛星の係わりについて、その基本的事項をここに紹介することとします。
 なお、災害対応については、GPS位置情報を活用した被災者の救助や安否確認、GPSによる活動部隊の自己位置評定や被害地点の評定・映像配信、人工衛星による被害軽減の取組み等、その他色々考えられるので、今後の研究課題とします。

2 自然災害の発生予測
(1)人工衛星の利用等による地殻変動の監視
 我が国は、ユーラシア、フィリピン海、北米及び太平洋プレートの境界付近に位置しており、プレート相互の運動により、たびたび地震が発生します。このほか、数多くの活断層による地震、活発な活動をしている火山等により地殻変動が大きいです。
 地震や火山噴火を予測するため、水準測量による地殻の上下変動及び宇宙技術を利用したGNSS測量による水平・上下変動等の観測により、広域的な地殻変動等の監視を推進しています。

(2)人工衛星の利用等による台風の大雨や強風の予測
 静止気象衛星に気象レーダを搭載し、宇宙から台風の内部構造を観測等することにより、地球規模の温暖化により脅威を増す台風の強風の予測精度向上被害軽減に向けた取り組みの有用性が検討されています。東南アジアでは、衛星と地上による観測で洪水を予測し、避難警報を出すというプロジェクトが進められており、日本もそれに協力しています。
台風19号ひまわり画像「出典:気象庁ホームページ」
【出典】気象庁ホームページ

3 被害情報の収集・共有
(1)人工衛星による観測の利点は、広域を一度に見渡せることと、地上や航空機での観測が困難な地域でも観測できることであり、例えば、東日本大震災直後に被災した福島第一原発を中心とした半径30km圏内の上空が飛行禁止となった際の観測に活用されました。

(2)人工衛星の観測画像について、被災前の画像被災後の画像を国や自治体に提供し、それらを比較することにより前後の変化を把握し、被害情報の収集を容易にしました。その際、防災関係部署は災害発生時には多忙なことから、すぐに使えることに留意して資料提供されました。
 また、被災状況の把握や被災者の捜索活動に貢献するため、津波による浸水域を示した画像や、がれきなど海上の漂流物を示した画像も提供されました。

(3)震災後は通信回線が途絶していたため、人工衛星回線を自治体に提供し、役所の活動や家族の安否確認等に活用されました。衛星通信については、将来的には、普段使っている携帯電話の端末を使えるようにして、災害時だけに使うのではなく、平常時に使って慣れている端末を緊急時にも使うというのが理想です。

(4)政府・自治体・防災関係機関等間の災害情報の相互共有は、人工衛星と災害情報システムとの連携を活用して実施されています。