危機管理業務部長
澤野 一雄
近年は、平成30年西日本豪雨災害、令和元年東日本豪雨災害、令和2年熊本県球磨川での水害、令和3年熱海市の土砂災害など、毎年のように豪雨災害が発生しています。また、今後も、気候変動の影響により、水害の更なる頻発・激甚化が懸念されています。これらのことは、下のグラフ(気象庁HPのデータを基に作成)で見る通り、この30年間で時間雨量50mmを上回る大雨の回数が約1.5倍に増加していることからも読み取れます。
では、このような水害の頻発・激甚化に対する住民の意識はどうなっているのでしょうか。
令和2年7月球磨川豪雨災害検証委員会における「初動対応」に係る住民意識調査結果によれば、住民避難の意識に関して「エリアメールが届いたが深刻に捉えていなかった」「河川整備も進み安全と思い、油断した」「浸水するとは思わなかった」などの声があります。
住民の避難に関する意識はあまり高くないように感じられます。これは、迫りくる危険に対して心の平穏を保とうとする「正常化の偏見」と呼ばれる心の働きに一因があると言われています。一方、同じ調査結果において「村の繰り返しの避難呼びかけで危険が高まっていると思い避難した」との声もありました。
このように、住民が適切に避難するかどうかは、災害・危機に対して「危険を感じるか」「感じないか」によるところが大きいようです。言い換えれば、豪雨時において、住民が適時・適切に危険を感じとることができれば、適切に避難行動ができるということでもあります。
豪雨時に適時・適切に危険を感じるためには、平素からハザードマップ等により地域の危険を知ること、過去の地域の災害や伝承を知ること、「避難カード」の作成など避難のための準備を行うこと、そして、豪雨時には、自治体から発令された避難指示や継続的に伝達される危険情報及び気象台からの気象警報を参考に自ら危険を感じる感覚を磨くことなどが重要だと思います。そして、少しでも危険を感じたら、躊躇せず避難行動のスイッチを入れることも必要だと思います。
なお、自治体が伝達する危険情報は、危険な地域に対する全体の情報であり、住民個々の危険を個別に伝達するものでないことを認識することも必要です。
これから梅雨の季節となりますが、今年は、豪雨災害による人的被害がないことを祈りたいと思います。