危機管理業務部 主任研究員
 坂上 栄一


 令和元年台風により千葉県では思わぬ被害となりました。電柱は元より倒木による電線被害は、千葉県のほぼ全域で長期の停電を余儀なくされました。その中で千葉市の美浜区は停電被害を受けることはありませんでした。実は、10年ほど前の東北大震災の際、液状化現象により区内は大打撃を受け、以後、液状化対策を行い、今回の台風に遭遇しました。その対策とは、電柱をなくし、電線を地上から地中に移し替えたのです。電柱のない景観な街に、台風の力は及びませんでした。私の実家、板橋でも一部で都市開発が終了し、一部の通りでは電線がなくなり昔の景観が消え去り、懐かしき良き故郷の光景が思い出せなくなり、チョッピリ寂しい気がします。不思議にスッキリした、風通しの良い街並みに生まれ変わっていました。
 電線が電柱の有る場合・地中にある場合について比較して見ましょう。
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 地中に電線があると断線した時に復旧に時間がかなりかかってしまうと思われがちですが、そうではないようです。
 「東日本大震災の際、東京以外ですが、地上にある機器が若干傾いたということですが、電線の地中化されたエリアでは大きな断線の被害はなかったようです。この機器内では衝撃による断線がないようにゆとりある長さで繋ぎ断線がないように対策してありました。」
 電柱を設置する周囲の環境によりコスト面が変わりますが、停電による被害額を考えれば安いかもしれません。停電による被害額の積算は、難しいかもしれませんが?
 電線類の無電柱化について紹介します。
 日本では、1928年に初めて電線地中化が行われ、兵庫県芦屋市に高級住宅街として造成された六麓荘町において導入されました。その後、1986年度から1998年度までに、全国で約3,400kmの地中化が行われました。和歌山県高野町では、2020年3月現在で町内の80%が無電柱化を終えました。
 無電柱化の方法として次の3つがあげられます。地中に埋める方法以外について紹介します。
 【裏配電】
  電柱のある道路の反対側にある裏道に移し、無電柱化する方法です。
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 【軒下配電】
  電線を沿道家屋の軒下や軒先を橋渡しする要領で設置します。
  (ヨーロッパの都市部では古くから一般に用いられています。)
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 【ソフト地中化】
  変圧器等の設置場所が確保できない場合は、電柱を撤去せずに、架線のなくなった電柱は照明を付けたりして街灯とするといった方法です。
 地中に張る配管等で考えられるのは、電線の他、上下水道・ガス・電話・ケーブル回線等があります。技術の進歩により意外な配管方法またはそれ以外が出現することを期待し、終わりとします。