危機管理業務部 主任研究員
 甲斐 康誠


 新型のバッテリー電気自動車(BEV)が発売され話題となっていますが、近年、災害時における電気自動車の活用が注目されています。これは、電気自動車の急速な普及に加え、平成30年北海道胆振東部地震による大規模停電や令和元年台風15号による長期の停電により、災害時の電源確保の重要性について、あらためて認識されたことによるものでしょう。
 これまで災害時の電源確保手段としては、小型の発動発電機と乾電池が一般的であり、その主な用途は、避難所などの入り口や廊下、トイレなどの照明用でした。現在は、スマートフォンなど情報通信機器への充電はもちろん、できれば電子レンジなどの調理器具やサーキュレーター、そして、要配慮者向けには、冷暖房装置も使えるようにしていきたいところです。
 こうなると、事業用大型発電機を設置するか、電力会社の努力で電力供給を早期再開(これが最も望ましい。)していただくしかないわけですが、せめて、照明と情報通信機器充電用の非常用電源だけでも、停電復旧が遅れる場合のバックアップとして、確保しておくことが必要となります。
そこで、活用が期待されるのが、情報通信機器の充電にも使える質の高い電気を供給することができる各種の電気自動車というわけです。
 実際に、北海道胆振東部地震による大規模停電が発生した際には、電気自動車(燃料電池車(FCV))が活躍し、札幌市庁舎でスマートフォンなどへの充電をしたり、自主避難所となった施設に照明用などの電気を供給したりしました。(出典:国土交通省北海道開発局HP)また、今回発売された軽の電気自動車(BEV)でも蓄電容量が20kWhあり、避難所などに配備されているポータブル型の蓄電池(0.5kWh前後)の数十倍という大容量の蓄電池を搭載しています。
 大きな電力供給能力のある電気自動車を災害時に活用していく方法としては、自治体の公用車に導入していくことや、災害時協力協定に基づいて、企業、団体、そして個人から提供を受けるといった方法などが考えられます。
 しかし、災害時に多くの電気自動車を非常用電源として確保することができたとしても、それだけで災害時の電源の問題が解決するのかというと、そうではないと思われます。まず、避難所として指定される学校などの公共施設には、電気自動車から電気を受け取るための設備が整っていません。電気自動車から供給される電気で、建物備え付けの照明やコンセントが使えるようなることが望ましいわけですが、電気自動車のコンセントから直接電気を受け取るという方法では、避難所の受配電設備に直接給電できる電気自動車の能力を、ほんの一部しか活用していないことになります。
 電気自動車の普及とともに、一般の住宅と電気自動車の間で電気のやり取りができる設備(V2H)やオートキャンプなどで電気自動車を電源として使用するための機器が普及していますが、避難所用にこのような設備を整備するとなると多額の費用がかかる反面、平時には、避難所となる学校などで電気自動車に充電するわけにもいかず、災害時専用の設備となってしまいがちです。
 また、電気自動車といえでも無限に供給できるわけではなく、電気自動車への電気や燃料の確保と供給をどうするのか、普通の自動車を電源に活用する場合と全く同じ課題も残っています。電気自動車は、避難所などの非常用電源としてとても有用ですが、それを十分に活用し、避難所の環境改善にもつなげていくためには、解決していくべき課題がまだまだ多くあるように思われます。