危機管理業務部 主任研究員
 三宅 丈也


 富士山噴火は、いつあってもおかしくないと言われ続けて既に久しくなってきました。
 富士山は、過去数千年の間に100回以上も噴火しているとされ、平安時代の800年と802年の延暦大噴火(日本紀略)や、864年〜866年の貞観大噴火(青木ヶ原樹海など誕生)等が古典文献等にも記録されています。その後も度々噴火していますが最後となる宝永噴火(1707年)以降は噴火が無く今に至っています。
 (「先人の教えΑ慂幻イ飽笋気譴榛匈欧竜憶』(2020年8月3日)」から抜粋)
 この最後の噴火があってから既に315年が経過しています。一説によると富士山噴火の周期は凡そ50〜100年とされ、これによれば確かにいつ噴火してもおかしくはないのです。
 火山現象として、噴火による噴石や火砕流、溶岩流、そして火山灰が一般的ですが、その他にも火山ガス、火山泥流(融雪型を含む)などがあり、更には山体崩壊、火山性地震などがあります。
 過去、実際に発生した災害の特徴的なものについて、幾つか紹介をします。

 私は元自衛官ですが、若い頃に、雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ)(長崎県)の噴火、火砕流への災害派遣を経験したことがあります。未だ、噴火活動が活発な時でしたので、ベース基地からは噴石を盛んに吐き出す様子を肉眼で確認することができ、大きな噴石が飛び出し始めると慌てて作業
等を中止して身近な金属製の防護壁内に隠れて難を避けました。20−画像1
 火山灰で一面が灰色に変わってしまった市内の中心地に自衛隊の戦車や装甲車が駐車されていたのですが、地域住民からは自分たちを火山災害から守ってくれる力強いヒーローの如き存在として期待されていました。
 また、ヘリコプターで上空から眺める機会がありましたが、火砕流が通り過ぎた跡は、周辺の緑色とは全く異なる褐色の帯と化してしまい、火砕流という圧倒的な自然災害の恐ろしさの一端を垣間見ることが出来ました。

 先人の教えА攤能】『日本人は如何に災害と付き合ってきたのか』(2020年11月9日)でも火山噴火の被害を述べましたので、以下、一部抜粋して紹介します。天明3(1783)年7月、浅間山が有史以来最大といわれる大噴火を起こし、岩石を吹き飛ばし噴煙を吹き上げました。火砕流は鬼押し出し溶岩を作り出し、軽井沢では直径30cmもある軽石が飛んできて怪我をしたり即死する者が続出し、その熱い火山岩によって多くの家屋が焼け落ちました。また、大噴火により引き起こされた土石流によって鎌原村は5〜6mの高さの土石に一村丸々埋められてしまいました。日本のポンペイと呼ばれているものです。
 しかし、浅間山に近い沓掛宿(現中軽井沢)や追分宿では繰り返す小噴火などから危機を感じたのか先ずは老人、子供を逃し、家財を牛馬に積んで大噴火までには住民全てが避難を完了したため死者は皆無でした。早い判断が決めた成功例です。
 火山活動が活発な桜島(鹿児島市)は、1914年の大正噴火によって流れ出た溶岩のため、それまで島であった桜島が大隅半島と地続きとなりました。その時に降り積もった火山灰は20km離隔した大隅半島でも1m以上だったそうです。なお、富士山の宝永噴火では東京都心(当時は江戸)にも火山灰が降り積もったそうです。
 2014年の御嶽山(おんたけさん)(長野県・岐阜県)の突然の噴火では、多くの登山客が被害を受け逃げ惑うショッキングな映像が放映されました。20-画像2
 5段階ある噴火警戒レベルで最も低いレベル1(活火山であることに留意)だったにも拘わらず突然噴火したものでした。登山等にあたっては、たとえ日頃は穏やかな山であっても活火山は突然噴火する場合があることを肝に銘じ、装備の充実、情報の継続的な入手、更には避難場所の確認などが必須となります。
 1983年に起きた三宅島の噴火では、溶岩流が島内最大の集落を飲み込んでしまいました。住民は避難していたため人的被害はありませんでしたが、固まった溶岩の撤去は困難であり結果として集団移転となりました。
 また、直接的に火山噴火に基づかない火山現象として、大雨などの影響により山体斜面の表層が崩壊(2018年の広島県など)した事例があります。
火山現象(災害)においては噴火だけでなく、様々な観点から具体的、詳細な研究、対応が望まれます。
 今回、活きた教訓、先人の教えとして、活火山を主体に実際にあった災害についてみてきましたが、活火山は勿論、活火山でなくても山体崩壊などの現象があります。日頃は穏やかな顔を見せる山が一瞬後には悪鬼の形相に変身することがある、という事実を私たちは決して忘れてはなりません。
 国内の活火山は、富士山を含めて111ありますが、2月末現在の気象庁発表では、阿蘇山(噴火警報【レベル3(入山規制)】)や御嶽山(噴火警報【レベル2(火口周辺規制)】)など活動を活発化している火山もあります。
 今年3月、山梨、静岡、神奈川の3県などでつくる富士山火山防災対策協議会が昨年3月大幅に改定した富士山噴火ハザードマップに基づき、避難計画(中間報告)をまとめ公表しました。渋滞の発生と市街地等平たんな場所における溶岩流の速度は人が歩く程度であることから、山梨と静岡の両県の一部地域においては原則、噴火後に徒歩で避難することを求めているものです。
 しかしながら、凡そ2900年前に富士山の古山頂付近の大崩壊がありましたが、時速100km以上の猛スピードで御殿場市を襲ったという実際に起きた大災害(静岡大学の研究)ですが、これについての検討、対応等ははかばかしくはありません。
 火口や噴火規模等によっては溶岩流の流れ方は一様ではない為、今後も科学的な研究を進めて、ハザードマップを大胆に修正するとともに過去に起きた災害事例を紐解き、監視体制を整え、計画を整備して訓練を行うなど諸準備を進めていくことが求められますが、他の自然災害などと比べて火山災害については、やや低調な気がするのは私だけでしょうか。火山災害についても決して忘れないようにしたいものです。