危機管理業務部 主任研究員
 三宅 丈也


 BCPという言葉を聞いたことがあるかと思います。Business Continuity Planの頭文字BCPをとった企業の事業継続計画のことです。もともと、リスクマネージメントという考えがありましたが、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件において、当該ツインタワーに在する某保険会社が従業員や顧客の避難誘導等において迅速かつ適切に実施した危機管理対応をキッカケにして各国で広がったものです。事件前に実施した訓練の成果が活かされたものであり、計画に基づき避難を迅速に決心・誘導できた賜物といえます。

 具体的には、
“BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のことです。
 緊急事態は突然発生します。有効な手を打つことができなければ、特に中小企業は、経営基盤の脆弱なため、廃業に追い込まれるおそれがあります。また、事業を縮小し従業員を解雇しなければならない状況も考えられます。
 緊急時に倒産や事業縮小を余儀なくされないためには、平常時からBCPを周到に準備しておき、緊急時に事業の継続・早期復旧を図ることが重要となります。こうした企業は、顧客の信用を維持し、市場関係者から高い評価を受けることとなり、株主にとって企業価値の維持・向上につながるのです。”
(経済産業省-中小企業庁HPから引用)と紹介されています。

三宅29画像1 ところで、防災(計画)とBCP(事業継続計画)の関係は?違いは?という疑問をお持ちになったりしませんか。平たくいいますと、その目的や主対象が異なっています。つまり、「防災(計画)」の目的は身体の安全と財産を守ることであり、その主対象は従業員やご家族であるのに対して、「BCP」の目的は企業を存続させることであり、その主対象はお客様であるというものです。さらに重視する事項として、「防災」は従業員等の安否を確認し、被災者を救助・支援すること、及び、被害を受けた拠点の被害を確認し復旧すること、です。
 これに対して「BCP」は、企業の重要業務を目標復旧時間内に目標復旧ポイントに基づき再開して事業を継続することにより企業として生き残ること、が重要視されます。また、時間軸的に見てみますと、災害が発生した直後においては、人命の安全確保が第一義であり、従業員やその家族の安否確認に努め、負傷者等への対応や二次災害の防止など初動対応マニュアルに基づき行動します。そして、初動対応が落ち着いてきたならば、BCP(事業継続計画)を発動して、企業としての重要業務の継続に努めていくというものです。

 さて、全ての介護施設・事業所では、2021年にBCPの策定等が義務化され、経過措置として3年の猶予期間が設けられました。つまり、BCP等策定は今年2024年3月末までの期限が迫っており、当該事業者の方は早急に策定しなければなりません。そうしなければ、何かあった際に社会的・道義的な責任が求められたり、損害賠償責任が生じたりします。BCP等を策定することによって、入居者・ご家族、そしてスタッフの安心、安全が得られますので、是非、速やかに作成にチャレンジしてみてください。
 とはいえ、介護が必要な利用者が暮らしている高齢者用の施設・事業所の多くでは、認知症の方や寝たきりの状態の方が多く、非常時における避難には多くの時間と人手が必要となります。しかし、これら施設は川の近くや低地などにあることも多く、さらに働いている介護スタッフが住む場所から遠く離れている場合も多く、非常時の対応には困難が生起するなど難題を多く抱えています。

三宅29画像2 作成に当たっては、最初から完璧なモノを作ろうとするのではなく、先ず作ってみる事です。そして、その計画に基づき非常時における避難やサービスの提供継続などの対応についてイメージトレーニングしてみたり、避難訓練をしてみる等によって浮き上がってくる問題点や課題を取り纏め、見直していくというスタンスが良いものと考えます。
 なお、BCP策定のひな型等については、下記の中企業庁「中小企業BCP策定運用指針」に詳しくございますので、割愛させて頂きます。
 参照; 中小企業庁「中小企業BCP策定  運用指針」