危機管理業務部 主任研究員
坂上 栄一
災害時に役立つように車を改造した４種類について紹介します。皆様もご存じの車両があると思います。災害時、必要となる要素に「運ぶ」という行為が重要となります。必要な場所（避難所等）に運んで、必要な空間を使用できる物ではなくてはなりません。次に紹介する車両は、必要な物と合体し、到着後、直に活用できるというものです。また、これらの中には、作製に至るまでに、過去の災害の教訓等が関わっているものもあります。こんなものがあったらと、おもいもよらないものを想像してみて下さい。きっといつかは実現すると思います。
≪１ 移動薬局車≫
薬局車は、持病の薬を失った被災者らに調剤や服薬指導を行うための車両です。災害時の仮設の薬局としてキャンピングカーを改造し、薬局と同等の機器や発電機を搭載しています。現在類似車両を含め、18都府県の約20台にとどまっています。薬事法などで平時に利用できず、災害時に限定されています。2011年の東日本大震災を教訓に作製されました。
≪２ 動く防災倉庫の軽トラ災害支援車≫
軽自動車の荷台に給水機能を持つ浄水器、発電機、調理バーナー、温水シャワーを備えた車両です。浄水器は1時間に飲料水350ℓ、生活用水600ℓを供給できます。長野県茅野市の「ミヤサカ工業」が作製し、災害支援車「コッくんレスキュー」と名図けられています。札幌市の病院などに納入が決まっています。2015年の関東・東北豪雨がきっかけで作製されました。特に浄水器については大量の飲料水を運ぶ困難から積載したものです。
≪３ 臭わず汚物をパック、水いらずのトイレカー≫
断水による劣悪なトイレ環境を打破して作製されたのが臭わず汚物をパック、水いらずのトイレカ
ーです。便器内にセットしたフィルムが自動的に排泄物を袋に包み込んで密閉し汚物が漏れること
はありません。1度のセットで最大50回の使用が可能であります。岐阜県可児市のキャンピングカー
を製造・販売する「トイファクトリー」が組み立てたものです。このウォーターレストイレはスイスのクレサナ社が開発したものです。１月の能登半島地震での現地の劣悪な環境を感じ、作製したものです。
≪４ 台所と合体したキッチンカー≫
ライフラインが復旧していなくても、必要な物資や食材を乗せて被災地まで移動し、温かい出来立ての料理を提供できるのがキッチンカーです。日頃から電気・ガス・水の量に気を配って調理することに慣れているため、効率よくこなすことができます。
能登半島地震では、農林水産省が外食業界団体である（一般社団法人）日本フードサービス協会と連携し、キッチンカーを利用した食事提供に努めました。また、各県等のキッチン協会からも派遣されたということです。
≪５ まとめ≫
災害時の思いを忘れることなく、後世に伝えることです。必要な技術が現れ、また制度が見直された時、実現可能へと加速されることでしょう。
車（電気使用可）プラス必要な物は何でしょうか。皆さんで考えてみたらいかがでしょうか。一例は次のとおりです。
